グーグルによるモトローラ買収






【香港=吉田渉】中国人民銀行(中央銀行)は25日に発表した利上げでインフレ抑制を最優先する方針を改めて強く打ち出した。香港市場では来年の年末にかけてさらに3~4回の利上げがあるとの見方が大勢を占める。欧米の投資家は現在クリスマス休暇中で、今回の利上げが世界の市場の動揺を招かぬよう人民銀が配慮した形跡もうかがえる。(1面参照)
中国の11月の前年同月比の消費者物価上昇率は5.1%と2年4カ月ぶりに5%の大台を超え、食品価格の高騰などを受けて市民の不満が高まっている。物価上昇率は既に預金金利を上回る「実質マイナス金利」の状態に陥っている。中国当局は金融政策を引き締め方向に転換する方針を打ち出しており、利上げは時間の問題との見方が強かった。
今後の焦点は2011年の利上げの時期と規模に移る。物価や不動産価格の動向を慎重に見極めつつ小刻みに利上げを進めるとの見方が多い。利上げの幅は今回と同様に0.25%刻みで3~4回にわたって進めるとの観測が大勢を占める。
今回の利上げを受けて中国の上海、香港株式市場では週明けから株価が下落する可能性もある。
急激な金融引き締めが実体経済に波及すれば企業業績が悪化するとの観測が強まるためだ。
中国国営の中央テレビは25日夜「欧米市場が閉まっているクリスマス休暇中の利上げは、市場に中国の利上げを消化する時間を与え、混乱を招かないようにする狙いがある」(国務院発展研究センター金融研究所の巴曙松副所長)との見方を伝えた。
金融庁は成長戦略で目標のひとつに「アジアのメーンマーケット」を掲げた。東京はニューヨーク、ロンドンと並ぶ世界の三大市場だったはずだが、その足元が揺らいでいる。
将来、有力通貨になるとみられる人民元。香港では元預金が急増している。10月末の残高は前月比45%増の2170億元(約2兆7千億円)で、1年前の3.8倍に。英HSBCは「中国が香港で元市場づくりを本格化している」と見る。
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香港は今年、世界の新規株式公開(IPO)の4分の1を手掛けた。米ゴールドマン・サックスのティモシー・モー・ストラテジストは香港について「外国為替取引の中心で、資本調達の場でもあるロンドン型の市場になる」と予測する。
巨大経済を背景にニューヨーク型の市場になるとみられているのは上海だ。モー氏によると「中国の株式市場の拡大は経済成長より早く、2020年代半ばには世界一になる」。その株式時価総額は20年に日本の4倍、30年には8.6倍になる見通しだ。
市場間競争は激しくなっている。現物取引では中国にかなわないため、先物取引に活路を見いだそうとしているのは韓国だ。先物の中心、シカゴ市場のアジア版をめざしている。
今年前半の金融派生商品(デリバティブ)取引では韓国取引所が契約数でシカゴ・マーカンタイル取引所グループを上回り世界一を維持。契約数は日本で最大のデリバティブ取引所である大阪証券取引所(15位)の19倍に達する。
中国、インド、インドネシアの間に位置するシンガポール。シンガポール取引所はオーストラリア証券取引所の買収を打ち出し、広域性を強めようとしている。英語が公用語で、法制度や透明性などでも欧米並みが売り物。欧米投資家のアジアへのゲートウエー(入り口)として存在感を高める考えだ。
日本も活性化を検討している。金融庁は証券、金融、商品を扱う総合取引所の創設を打ち出した。しかし株式は上海、人民元は香港、先物はソウルなどアジアの中心市場が固まりつつあり、統合で取引をひき付けられるかどうかは不透明だ。東京証券取引所も来年度前半に、午前の取引時間を30分延長する。ただ実務慣行を大きく変更できないとして、昼休みの完全廃止、午後の取引時間の延長などは見送った。
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アジアで競争相手がいなかった時代の考えや、その慣行を維持したままの活性化には限界がある。アジアのメーンマーケットとして残りたければ、アジアが動いている間、例えばインドの取引が終わるまで市場を開けておくべきだろう。市場づくりの基本は業者の事情ではなく、利用者の利便性にある。10年後を見据えて巨大市場・中国の隣で、誰のための、どういう市場をつくるのか一から考え直す時期に来ている。
「静かな撤退が始まっている」。日銀の貸出・資金吸収動向によると、11月末の外国銀行の円貸出残高は3兆7000億円。残高を公表している1995年10月以降で最低を記録した。外資系金融機関幹部は経営の力点が日本から中国、インドに移りつつあると打ち明ける。静かな撤退の範囲は貸し出しから資本市場の業務へと広がる見通しで、市場復活に向けて残された時間は限られている。
【北京=高橋哲史】中国人民銀行(中央銀行)は25日、金融機関の貸し出しと預金の基準金利(期間1年)を26日から0.25%引き上げると発表した。利上げは2年10カ月ぶりの実施となった10月20日以来、約2カ月ぶり。海外からの資金流入の加速でインフレや不動産バブルの懸念が高まっており、人民銀は金融引き締めの姿勢を一段と鮮明にする。
中国では市場金利を誘導する先進国型の金融政策が確立しておらず、人民銀が預金・貸出金利を直接操作する。今回の利上げで政策金利に相当する期間1年の基準金利は貸し出しが5.81%、預金が2.75%となる。
貸し出しの基準金利は前回の利上げの最終局面である2007年12月時点で7%を超えていた。この水準に比べるとまだ利上げの余地は大きく、来年も追加の利上げが続くとの観測は多い。
中国共産党・政府は12日に閉幕した年に1度の中央経済工作会議で、金融政策の基本方針を危機対応で取ってきた「適度に緩和的」から「(中立に近い)穏健」に転換することを決めた。市場では人民銀が早期に利上げを実施するとの観測が強まり、24日の上海銀行間取引市場では翌日物金利がほぼ3年ぶりの水準まで上昇していた。
中国の11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.1%上昇し、2年4カ月ぶりの高い伸びとなった。人民銀のアンケート調査では回答者の約7割が「物価高に耐えられない」と答えており、国民の不満は急速に高まっている。人民銀は早期利上げで物価抑制への決意を示す必要があると判断したもようだ。
利上げには不動産価格の上昇を抑える狙いもある。主要70都市の不動産販売価格は11月まで3カ月連続で前月に比べ上昇した。人民銀の胡暁煉副総裁は金融引き締めが「資産バブルの防止に役立つ」と言明している。
物価や不動産価格の上昇が止まらない背景には、先進国の低金利政策でだぶついた資金が中国国内に流れ込んでいることがある。人民銀は米国が11月に量的緩和策の第2弾(QE2)を決めたことでこうした資金流入が加速したとみており、市中銀行から強制的に預かる資金の比率を示す預金準備率の引き上げなども活用してカネ余りの解消を急ぐ方針だ。
日本経済新聞社が25日まとめた社長100人アンケートで、国内景気が本格回復前に落ち込む「二番底」の懸念が和らいできたことが分かった。足元の景況感は良くないものの、二番底の危険性が「出てきた」と答えた経営者は31.5%で、10月の前回調査より18.1ポイント減った。本格回復を来年後半とみる経営者が過半数を占め、来年度損益も半数が「改善しそう」と答えた。(関連記事企業面、詳細を27日付日経産業新聞に)
社長100人アンケートは国内主要企業の社長(会長、頭取などを含む)を対象に四半期ごとに実施。今回は24日までに調査、143社から回答を得た。
足元の景気については半年前に比べて「悪化した」との回答が全体の4割に上り、前回調査(26.6%)より14ポイント増えた。悪化の要因(複数回答)は「政策効果の一巡」が75.9%でトップ。エコカー補助金の終了やエコポイントの半減で自動車、家電販売に駆け込み需要の反動が起きていることが影響したようだ。
「改善した」とする回答の割合から「悪化した」を引いたDIもマイナス32.9で、前回(マイナス4.2)から悪化した。
ただ、先行きについては明るい見通しが増えている。景気の二番底の危険性が「多少薄れた」「ほとんどない」と答えた割合から「相当出てきた」「多少出てきた」と答えた割合を引いた数値は4.9。この質問を設けた2009年10月以降でみると数値がプラスに転じたのは初めて。
二番底回避の要因を2つまで選んでもらったところ、中国など「新興国経済の堅調さ」(69.2%)が最も多く、次いで「円高の一服感」(40.4%)が挙がった。
景気が持ち直す時期については「11年7~9月」と「11年10~12月」が27.3%ずつを占めた。これを受けて、11年度の損益見通しは10年度に比べ「大幅に改善しそう」が6.3%、「やや改善しそう」が42.6%に達した。世界景気の現状を「拡大している」とみる経営者は8割に上り、海外の成長を糧に業績改善が進むとの見方が強まっている。
同一発行体であっても、格付機関によって付与されている格付が異なります。 下図は、格付機関ごとのR&Iとの平均ノッチ差を示しています。
格付機関ごとに比較すると、JCRが最も高い格付を付与する傾向にあり、 S&Pが最も低い格付を付与する傾向にあります。
例えば、R&Iの発行体格付は「A+」でしたが、S&Pの格付が「BBB+」のケースは、 3ノッチの差が発生していますが、2006年9月末におけるS&PとR&Iの平均ノッチ差が約2.5であることを考えると、 平均的なノッチ差に近いと考えることができます。
【R&Iとの平均ノッチ差】
出所:下田尚人、河合祐子『格付格差の現状と背景:依頼格付と非依頼格付、レーティング・スプリット』
Published: November 10 2010 23:00 | Last updated: November 10 2010 23:00
As the Group of 20 meets to seek common ground on protectionism, this year’s euro crisis will hover over their deliberations. The crisis that erupted in Greece has again exposed the fragility of a key element of currency-pooling arrangements: the important value created by a pooling of interests tends to be distributed disproportionately in favour of the financially less collegial members of the pool. Thus, unless restrained, too often, some members will try to exploit their advantage, as Greece brazenly did in recent years.
The restraint imposed on the euro area by the stability and growth pact was supposed to limit euro-denominated sovereign borrowings. The pact, confronted with its first big test in 2003, failed. The cumulative consequences of the failure emerged this year as a fiscal crisis in Greece and other euro members. The benevolent mood accompanying the creation of the euro was nowhere to be seen.
Fortunately, threats to European monetary union, so far, have been successfully fended off by the herculean actions of the European community assisted by the International Monetary Fund. Currency problems have now spread to the global financial system which, like the euro area, requires adherence to certain rules to sustain it. It is not only the well publicised friction between China and America – both may be right about each other – but also by the drive for competitive export advantage through currency manipulation in a world where a zero global current account balance permits none.
China has become a major global economic force in recent years. But it has not yet chosen to take on the shared global obligations that its economic status requires. Chinese policymakers still believe, incorrectly in my view, that if they cannot keep their currency suppressed and exports booming, their country faces economic contraction and dreaded political instability. But China also realises it needs the global market to prosper, and should widespread protectionism take hold, its prosperity would likely be one of its large casualties. China seems to be seeking a balance in which the renminbi appreciates against the dollar, but only modestly.
America is also pursuing a policy of currency weakening. The suppression of the renminbi and the recent weakening of the dollar are, of necessity, producing firming exchange rates in the rest of the world to, as they see it, the rest of the world’s competitive disadvantage. Something has to give in this arena of zero-consolidated current account balances.
One of the least heralded events of the past two years has been the recovery and vigour of global trade. The ratio of global exports to gross domestic product that fell sharply during the crisis had fully recovered by the second quarter of this year. Preliminary estimates for the third quarter, however, suggest a modest slowing.
For a half century or more, global trade has risen faster than GDP. That is one reason the Chinese development model, based on rapidly increasing global export markets, and earlier, the paradigm of the Asian tigers, have been so successful. But even without protectionism, there are clear upside limits to the growth rate of global trade. Protectionism would accelerate that slowing.
As G20 members gather, they appreciate that despite heated political rhetoric, protectionism has failed to emerge in full force. This may have been one of this year’s most pleasant surprises. The G20, in April 2009, in perhaps its most productive meeting, emphasised support for unfettered global trade. The need to convert those uplifting words to immediate action will dominate this week.
The global trading system can tolerate a modest amount of protection and still, in conjunction with the financial system, tend to direct much of the world’s savings to the most potentially productive investments. Typically, that elevates global productivity growth and living standards. But the flaws in the global trading system are large and worrisome.
We should not wish to inhibit those market-determined capital flows that reflect the cross-border shifting of resources that enhances global productivity. These flows are the big determinants of desirable realignments of exchange rates over time. But we should discourage reserve accumulation whose sole purpose is to suppress exchange rates for competitive export advantage. This, of course, has been the market-distorting consequences of China’s accumulation of over $2,000bn of reserves since 2000.
What the G20 can initiate through the IMF is a set of rules that limits the accumulation of reserve assets and sterilisation of capital inflows. China may need an officially sanctioned extended adjustment period, and provisions may be required to deal with unsterilised capital inflows threatening smaller markets. But that would be far easier to monitor and control than a stability and growth pact that requires control of central government revenues and spending.
Delimiting a country’s ability to suppress its exchange rate (reserve accumulation limits) or to blunt the effect of unwanted capital inflows (sterilisation) may not fully dissuade a country bent on other protectionist forms. But if the G20 is serious in pledging to sustain open multilateral trade and the international financial system that fosters it, it should be willing to forgo an element of sovereignty to achieve net gains for all.
The writer is former chairman of the US Federal Reserve
2011年3月期下期(10年10月~11年3月期)の業績が当初の想定以上に好調で、株価に割安感のある銘柄はどれか。PBR(株価純資産倍率)が1倍未満で、下期の経常利益予想が期初予想を上回る銘柄を、下期の経常増益率の大きい順に並べたところ、海運や化学が上位に入った。
対象は東京証券取引所第1.2部に上場する3月期決算企業(金融除く)で、株式時価総額が200億円以上の会社。PBRが1倍未満で、11日時点の今期業績予想をもとに計算した下期の経常利益見通しが期初計画を上回る企業を選んだ。前年下期の経常損益が赤字の会社などは除いた。
ランキングの上位に目立ったのは、アジア経済の拡大の恩恵を受ける海運、化学など。
1位の日本郵船の経常利益は前年同期比3倍の401億円となる見通し。期初予想の310億円(2.3倍)から増益幅が拡大する。アジアで生産した日用雑貨や機械などの欧米向け出荷が増加。下期のコンテナ船事業の経常損益は83億円の黒字と、前年同期の赤字から大幅に改善する。
PBRは5月以降、0.8~0.95倍程度で推移している。円高による利益目減りなどが懸念されているためだが「アジアと北米を結ぶ航路の市況が需要期にあたる年末も安定していれば、投資を考えたい」(国内金融機関)との声があった。
化学では東京応化工業が16位、三菱ケミカルホールディングスが17位、積水化学工業が20位に入った。
東応化は主力の材料事業で韓国などアジアを中心に半導体向けレジストの販売が好調で、下期の経常利益は44%増の23億円と期初計画から1割超拡大する見通し。
三菱ケミHDはアジアでの旺盛な液晶テレビの需要に支えられ、関連部材の販売が伸びている。下期の経常利益は41%増える見通しだ。
株価が割安なのは「日本の化学会社は規模の面で欧米に見劣りするため」(りそな銀行の戸田浩司チーフ・ファンド・マネージャー)。ただ「各社の業績は事前の想定を大きく超え、株価は水準訂正に向かう」(国内投資顧問)との見方もある。
株式市場では、先進国の金融緩和による資金流入が期待されている。「投資家のリスク許容度が増せば、業績好調で割安な銘柄が見直される地合いになる」(ちばぎんアセットマネジメントの奥村義弘調査部長)との指摘があった。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)とみずほFGの2メガバンクは12日、2010年4~9月期決算を発表した。三井住友の連結純利益は前年同期比3.4倍の4174億円と過去最高。みずほも同3.9倍の3417億円と過去2番目の高水準だった。企業倒産が減り、不良債権処理損失が少なかったほか、金利低下で国債売買益が膨らんだ。ただ銀行を取り巻く経営環境は厳しく、通期見通しの上方修正には慎重さが目立つ。
4~9月期は中小企業金融円滑化法の影響などで企業倒産が減少したため、不良債権に絡む損失が前年同期と比べて大幅に減り、業績の押し上げ要因となった。三井住友銀行は貸倒引当金などの不良債権処理損失が前年同期比で1100億円以上減り、433億円にとどまった。みずほでは取引先企業の業績が改善したことなどから、不要になった引当金が利益として戻ってきたため、傘下3行合算で252億円の戻り益を計上した。
この4~9月は長期金利が一時1%を割るなど金利が低下し、保有国債の価格が上昇。これに伴い三井住友では国債などの売買益が3.9倍の1511億円に膨らんだ。みずほは7.7倍の1262億円を計上した。
この結果、本業のもうけを示す実質業務純益(傘下銀行ベース)は三井住友が31%増の4932億円。みずほは3行合算で32%増の4451億円となった。
4~9月期の純利益が5月時点の当初予想を大幅に上回ったのを踏まえ、11年3月期通期予想も三井住友は5400億円(当初予想は3400億円)、みずほは5000億円(同4300億円)にそれぞれ引き上げた。ただ4~9月期の利益水準は通期予想に対して、三井住友が77%、みずほは68%に達しており、「上半期に比べて下半期の業績はかなり慎重にみている」(みずほFGの塚本隆史社長)。業績上方修正にもかかわらず、配当の増額は見送った。
景気の減速懸念や親密ノンバンクの苦戦など収益環境の悪化に加えて、大幅に厳しくなる新自己資本比率規制への対応が控えており、内部留保の積み増しを優先する構えだ。
首脳が集まる国際会議では、たいてい「合意文書」という名の妥協の産物ができあがる。だが、国益をかけた激しい駆け引きはその舞台裏で交わされる。今週の20カ国・地域(G20)サミットとアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議も例外ではない。
「米中関係は強まり、世界的な課題も話し合うようになった」。オバマ大統領がこう評価すれば、胡錦濤国家主席も「中国は米国との対話や連携を増やす」と応じる。ソウルでの米中首脳会談は、なごやかに始まった。
「対話より圧力」
これはつかの間の握手にすぎない。実際にアジア太平洋という舞台では、米国と中国の覇権争いの足音が聞こえる。流れを決定づけたのが、南シナ海を「内海」であるかのように位置づける中国の行動や、尖閣諸島沖の衝突事件を受けた日本への強硬な対応だった。
「今年、政権内では対中政策をめぐる論争が続いてきたが、対話より圧力に軸足を置くしかないという結論に落ち着いた」。米政府当局者はこう解説する。中国の軍事、政治力の膨張に対応するために「日韓やインド、ベトナム、オーストラリア、インドネシアとの協力を強める」と語る。
そんな対中戦略の見取り図はそのまま、オバマ大統領の今回のアジア歴訪の足取りに重なる。
まず訪れたのは中国を潜在的脅威とみなすインドだった。民主主義の協力相手として、シン首相と抱擁を交わし、学生との集会では「21世紀の歴史は米国とインドでつくられる」と持ち上げた。
次の訪問先にインドネシアを選んだのも対中の思惑があった。同国は東南アジア諸国連合(ASEAN)の4割に当たる人口を抱え、来年はASEANの議長国になる。インドネシアがどう振る舞うかは、米中のアジア力学を左右する。
「どの国も国際的な枠組みとルールに沿って行動すべきだ」。オバマ氏はユドヨノ大統領との共同記者会見で、こう力説し、中国をけん制した。
米側が攻勢を強めるにつれ、それに対抗しようとする中国外交の車輪もめまぐるしく回る。
オバマ氏がインドネシア入りする前日の8日。ジャカルタの空港にスーツ姿の中国人らが降り立った。呉邦国全国人民代表大会委員長(国会議長に相当)が率いる中国代表団だ。呉氏はオバマ氏に先んじて66億ドルものインフラ支援を約束した。
中国は欧州の取り込みも急ぐ。胡主席はG20の直前にフランスを訪問。これに合わせて、中国企業が仏企業から100億ユーロを超える航空機や核燃料などの購入契約を結んだ。9~10日にはキャメロン英首相と経済界の首脳50人を北京に招いた。
アジアを舞台にパワーゲームを繰り広げる米中。中国には国力を増し、いずれは米主導の秩序を変えたいという目標もある。「いまの国際システムは米国に牛耳られている。この土俵で中国が台頭しようとしても『責任大国』の名のもとに米国から色々な要求を突きつけられ、阻まれてしまう」。中国政府の外交ブレーンはこう漏らす。
もっとも、経済的に深く結びつき、北朝鮮・イラン問題での協力も欠かせない米中に衝突の選択肢はない。先月30日にはクリントン国務長官が訪問先のハノイから中国・海南島に立ち寄り、胡氏の側近である戴秉国国務委員と会談した。米中は疑念を抱きながらも、来年1月の胡氏の訪米に向けて個別の懸案では妥協を探るとみられる。
軸定まらぬ日本
そうしたなか、日本は外交の軸が定まらず、立ちすくんでいるように見える。「菅直人首相は今回の尖閣問題を教訓に、対中戦略で日米がしっかり連携する必要性を痛感した」。菅首相の周辺はこう打ち明ける。
菅首相は13日に予定される日米首脳会談で同盟修復の道筋をつけ、明確な安保像を描けるのか。アジアの力学が揺れるなか、もはや立ち止まっている時間はない。
(編集委員 秋田浩之)
ソウルから横浜へ。G20サミットを終えてアジア太平洋経済協力会議(APEC)に大移動する指導者は「妥協から連携へ」と頭の切り替えを迫られる。
12日午前3時。事務方が11日夕までに固めるはずの首脳宣言案がやっとまとまった。米国と中国の対立が解けず、経常収支の不均衡を直す目安をいつまでに作るかは首脳の判断に託された。
文言調整の焦点だった為替問題。素案には「通貨の競争的な過小評価を避ける」と人民元の切り上げを迫る強い表現を盛り込んだ。だが中国の巻き返しで一般的な表現の「切り下げ」に戻された。
目先の論争次々
同時不況の脱出で世界が結束した米ワシントンから2年。G20会議は変質した。韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が意図した金融の新しいルール作りなどは脇役に。代わって通貨摩擦や不均衡といった、眼前の論争の仲裁に追われた。
人民元改革の遅れ。米のドル安容認。欧州の財政不安。アジア諸国の為替介入……。対立の構図は「先進国と新興国」といった単純な姿ではない。米の量的緩和には、中国やブラジルに加えてドイツのメルケル首相までも批判に参戦した。
「不ぞろいの成長と広がる不均衡が、協調を乱す行動への誘惑をかき立てている」――。首脳宣言は異例の表現で抜け駆けをけん制した。通貨安競争と保護貿易を排除する。経常黒字国は内需を、赤字国は貯蓄をふやす。いつも通りの政策協調だが、実効性を担保する手段は乏しい。
「グローバルな会議を地域のAPECより先に開くのは当然」と韓国が先に開いたG20。繕った協調には危うさが伴う。むしろ頼みにできるのは、APECのような枠組みを生かしてアジアの成長を取り込む戦略だ。
安価な生産拠点だったアジアは、人々の所得増加で「世界の工場から世界の市場へ」(行天豊雄・元財務官)と変容しつつある。成長低迷にあえぐ先進国が、経済連携という誘い水で、そのアジアを囲い込もうとあれこれ駆け引きを始めている。連携というより競争という言葉がふさわしい。
環太平洋経済連携協定(TPP)をひっさげて「アジアへの関与を強める」と強調するオバマ米大統領。12日の記者会見で、親密な国家リーダーとして真っ先に挙げたのは「インドのシン首相」だった。APEC参加21カ国・地域の経済規模は世界の53%。アジアが高成長を続ければ、存在感は飛躍的に高まる。
韓国との自由貿易協定を結んだ欧州連合(EU)も米主導のTPPに注目し「参加を探る国に間髪を入れず接近している」(経済産業省)。東南アジア諸国連合に日中韓が加わる枠組みなども含め「様々な連携が並列で動きながら進む」と伊藤元重東大教授は言う。
迅速さと意志を
日本のスピード感がここで問われる。「資金も技術もある日本には、有力な市場として想像以上に期待が大きい」と野村ホールディングスの氏家純一会長は言う。シンガポールのリー・シェンロン首相は「日本が参加すれば重みが増す」とTPP陣営に手招きする。
今月9日。TPP参加の9カ国と日本政府による局長級の情報交換会は「あたかも『9プラス1』の面接といった感じだった」(政府筋)。日本が聞き出せたのは9カ国の交渉内容や日程など基本情報だけ。菅直人首相は議長国の立場で9カ国の首脳と会う方向だが、そこで何を語るのか。
アジアの経済力学は猛烈な勢いで変化している。APECの地元開催という機会に明確な意志とアイデアを出せなければ、日本は「アジアの時代」という追い風に本当に取り残される。
(編集委員 菅野幹雄)