2010年12月26日日曜日
平成23年度予算 ~新政権民主党、真の実力~
中国、利上げ継続観測
「来年末まで3~4回」
- 2010/12/26付
- 日本経済新聞 朝刊
【香港=吉田渉】中国人民銀行(中央銀行)は25日に発表した利上げでインフレ抑制を最優先する方針を改めて強く打ち出した。香港市場では来年の年末にかけてさらに3~4回の利上げがあるとの見方が大勢を占める。欧米の投資家は現在クリスマス休暇中で、今回の利上げが世界の市場の動揺を招かぬよう人民銀が配慮した形跡もうかがえる。(1面参照)
中国の11月の前年同月比の消費者物価上昇率は5.1%と2年4カ月ぶりに5%の大台を超え、食品価格の高騰などを受けて市民の不満が高まっている。物価上昇率は既に預金金利を上回る「実質マイナス金利」の状態に陥っている。中国当局は金融政策を引き締め方向に転換する方針を打ち出しており、利上げは時間の問題との見方が強かった。
今後の焦点は2011年の利上げの時期と規模に移る。物価や不動産価格の動向を慎重に見極めつつ小刻みに利上げを進めるとの見方が多い。利上げの幅は今回と同様に0.25%刻みで3~4回にわたって進めるとの観測が大勢を占める。
今回の利上げを受けて中国の上海、香港株式市場では週明けから株価が下落する可能性もある。
急激な金融引き締めが実体経済に波及すれば企業業績が悪化するとの観測が強まるためだ。
中国国営の中央テレビは25日夜「欧米市場が閉まっているクリスマス休暇中の利上げは、市場に中国の利上げを消化する時間を与え、混乱を招かないようにする狙いがある」(国務院発展研究センター金融研究所の巴曙松副所長)との見方を伝えた。
アジアに埋もれる日本 編集委員 太田康夫
- 2010/12/26付
- 日本経済新聞 朝刊
金融庁は成長戦略で目標のひとつに「アジアのメーンマーケット」を掲げた。東京はニューヨーク、ロンドンと並ぶ世界の三大市場だったはずだが、その足元が揺らいでいる。
将来、有力通貨になるとみられる人民元。香港では元預金が急増している。10月末の残高は前月比45%増の2170億元(約2兆7千億円)で、1年前の3.8倍に。英HSBCは「中国が香港で元市場づくりを本格化している」と見る。
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香港は今年、世界の新規株式公開(IPO)の4分の1を手掛けた。米ゴールドマン・サックスのティモシー・モー・ストラテジストは香港について「外国為替取引の中心で、資本調達の場でもあるロンドン型の市場になる」と予測する。
巨大経済を背景にニューヨーク型の市場になるとみられているのは上海だ。モー氏によると「中国の株式市場の拡大は経済成長より早く、2020年代半ばには世界一になる」。その株式時価総額は20年に日本の4倍、30年には8.6倍になる見通しだ。
市場間競争は激しくなっている。現物取引では中国にかなわないため、先物取引に活路を見いだそうとしているのは韓国だ。先物の中心、シカゴ市場のアジア版をめざしている。
今年前半の金融派生商品(デリバティブ)取引では韓国取引所が契約数でシカゴ・マーカンタイル取引所グループを上回り世界一を維持。契約数は日本で最大のデリバティブ取引所である大阪証券取引所(15位)の19倍に達する。
中国、インド、インドネシアの間に位置するシンガポール。シンガポール取引所はオーストラリア証券取引所の買収を打ち出し、広域性を強めようとしている。英語が公用語で、法制度や透明性などでも欧米並みが売り物。欧米投資家のアジアへのゲートウエー(入り口)として存在感を高める考えだ。
日本も活性化を検討している。金融庁は証券、金融、商品を扱う総合取引所の創設を打ち出した。しかし株式は上海、人民元は香港、先物はソウルなどアジアの中心市場が固まりつつあり、統合で取引をひき付けられるかどうかは不透明だ。東京証券取引所も来年度前半に、午前の取引時間を30分延長する。ただ実務慣行を大きく変更できないとして、昼休みの完全廃止、午後の取引時間の延長などは見送った。
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アジアで競争相手がいなかった時代の考えや、その慣行を維持したままの活性化には限界がある。アジアのメーンマーケットとして残りたければ、アジアが動いている間、例えばインドの取引が終わるまで市場を開けておくべきだろう。市場づくりの基本は業者の事情ではなく、利用者の利便性にある。10年後を見据えて巨大市場・中国の隣で、誰のための、どういう市場をつくるのか一から考え直す時期に来ている。
「静かな撤退が始まっている」。日銀の貸出・資金吸収動向によると、11月末の外国銀行の円貸出残高は3兆7000億円。残高を公表している1995年10月以降で最低を記録した。外資系金融機関幹部は経営の力点が日本から中国、インドに移りつつあると打ち明ける。静かな撤退の範囲は貸し出しから資本市場の業務へと広がる見通しで、市場復活に向けて残された時間は限られている。
中国、追加利上げ
0.25%、インフレ抑制
【北京=高橋哲史】中国人民銀行(中央銀行)は25日、金融機関の貸し出しと預金の基準金利(期間1年)を26日から0.25%引き上げると発表した。利上げは2年10カ月ぶりの実施となった10月20日以来、約2カ月ぶり。海外からの資金流入の加速でインフレや不動産バブルの懸念が高まっており、人民銀は金融引き締めの姿勢を一段と鮮明にする。
中国では市場金利を誘導する先進国型の金融政策が確立しておらず、人民銀が預金・貸出金利を直接操作する。今回の利上げで政策金利に相当する期間1年の基準金利は貸し出しが5.81%、預金が2.75%となる。
貸し出しの基準金利は前回の利上げの最終局面である2007年12月時点で7%を超えていた。この水準に比べるとまだ利上げの余地は大きく、来年も追加の利上げが続くとの観測は多い。
中国共産党・政府は12日に閉幕した年に1度の中央経済工作会議で、金融政策の基本方針を危機対応で取ってきた「適度に緩和的」から「(中立に近い)穏健」に転換することを決めた。市場では人民銀が早期に利上げを実施するとの観測が強まり、24日の上海銀行間取引市場では翌日物金利がほぼ3年ぶりの水準まで上昇していた。
中国の11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.1%上昇し、2年4カ月ぶりの高い伸びとなった。人民銀のアンケート調査では回答者の約7割が「物価高に耐えられない」と答えており、国民の不満は急速に高まっている。人民銀は早期利上げで物価抑制への決意を示す必要があると判断したもようだ。
利上げには不動産価格の上昇を抑える狙いもある。主要70都市の不動産販売価格は11月まで3カ月連続で前月に比べ上昇した。人民銀の胡暁煉副総裁は金融引き締めが「資産バブルの防止に役立つ」と言明している。
物価や不動産価格の上昇が止まらない背景には、先進国の低金利政策でだぶついた資金が中国国内に流れ込んでいることがある。人民銀は米国が11月に量的緩和策の第2弾(QE2)を決めたことでこうした資金流入が加速したとみており、市中銀行から強制的に預かる資金の比率を示す預金準備率の引き上げなども活用してカネ余りの解消を急ぐ方針だ。
社長100人アンケート
景気「二番底」懸念和らぐ 本格回復は来年後半に 来年度業績「改善」が半数
日本経済新聞社が25日まとめた社長100人アンケートで、国内景気が本格回復前に落ち込む「二番底」の懸念が和らいできたことが分かった。足元の景況感は良くないものの、二番底の危険性が「出てきた」と答えた経営者は31.5%で、10月の前回調査より18.1ポイント減った。本格回復を来年後半とみる経営者が過半数を占め、来年度損益も半数が「改善しそう」と答えた。(関連記事企業面、詳細を27日付日経産業新聞に)
社長100人アンケートは国内主要企業の社長(会長、頭取などを含む)を対象に四半期ごとに実施。今回は24日までに調査、143社から回答を得た。
足元の景気については半年前に比べて「悪化した」との回答が全体の4割に上り、前回調査(26.6%)より14ポイント増えた。悪化の要因(複数回答)は「政策効果の一巡」が75.9%でトップ。エコカー補助金の終了やエコポイントの半減で自動車、家電販売に駆け込み需要の反動が起きていることが影響したようだ。
「改善した」とする回答の割合から「悪化した」を引いたDIもマイナス32.9で、前回(マイナス4.2)から悪化した。
ただ、先行きについては明るい見通しが増えている。景気の二番底の危険性が「多少薄れた」「ほとんどない」と答えた割合から「相当出てきた」「多少出てきた」と答えた割合を引いた数値は4.9。この質問を設けた2009年10月以降でみると数値がプラスに転じたのは初めて。
二番底回避の要因を2つまで選んでもらったところ、中国など「新興国経済の堅調さ」(69.2%)が最も多く、次いで「円高の一服感」(40.4%)が挙がった。
景気が持ち直す時期については「11年7~9月」と「11年10~12月」が27.3%ずつを占めた。これを受けて、11年度の損益見通しは10年度に比べ「大幅に改善しそう」が6.3%、「やや改善しそう」が42.6%に達した。世界景気の現状を「拡大している」とみる経営者は8割に上り、海外の成長を糧に業績改善が進むとの見方が強まっている。
2010年12月20日月曜日
今週のポイント
2010年12月19日日曜日
格付けの違い
格付機関によるノッチ差
同一発行体であっても、格付機関によって付与されている格付が異なります。 下図は、格付機関ごとのR&Iとの平均ノッチ差を示しています。
格付機関ごとに比較すると、JCRが最も高い格付を付与する傾向にあり、 S&Pが最も低い格付を付与する傾向にあります。
例えば、R&Iの発行体格付は「A+」でしたが、S&Pの格付が「BBB+」のケースは、 3ノッチの差が発生していますが、2006年9月末におけるS&PとR&Iの平均ノッチ差が約2.5であることを考えると、 平均的なノッチ差に近いと考えることができます。
【R&Iとの平均ノッチ差】
出所:下田尚人、河合祐子『格付格差の現状と背景:依頼格付と非依頼格付、レーティング・スプリット』