12月16日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)は16日、資本をほぼ倍に増やすと発表した。ソブリン債危機対応で実施しているポルトガルやアイルランド国債購入によって生じ得る損失に備え、資本基盤を強化する。
声明によれば、ECBは資本を50億ユーロ(約5600億円)増やし、107億6000万ユーロとする。今年12月29日から増資を開始する。
増資の決定は、ECBが域内財政難国の国債購入により損失が生じるとの懸念を抱いていることを示唆する。5月のプログラム開始以来の購入額は720億ユーロ。ECB当局者らは域内債務危機で同中銀への負担が大きいことを懸念し、各国政府の取り組み強化を求めている。
ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)のエコノミスト、シルビオ・ペルーゾ氏(ロンドン在勤)は「明らかに、ECBが懸念し始めていることを認めたものだ」とし、「額は少なく、ECBがバランスシート上に抱えたリスクを相殺するのに十分でないことは明白だ」と続けた。
追加資本はユーロ圏の16カ国の中銀が拠出する。発表によると、3年間で3回、同額ずつを注入し、2012年末に増資が完了する。
ECBは「為替レートと金利、金相場のボラティティや信用リスクの高まりに照らし、資本増強が適切と判断した」と説明。「大幅に規模が拡大した金融システムにおいて適切な資本基盤を準備する必要性も増資の理由だ」と続けた。
ジェフリーズ・インターナショナルのロンドン在勤チーフエコノミスト、デービッド・オーエン氏は15日の投資家向け文書で、購入額が年末までにECBの準備水準を上回る可能性があるとして、増資は「驚くには当たらない」と書いていた。ECBの今年の収支がマイナスになる恐れもあると指摘した。
ECBによると、ユーロ圏外の欧州連合(EU)諸国は資本拠出額に「微小な調整」を加えるだけで済む。ECBはユーロ圏外の国の出資比率を3.75%と従来の7%から縮小させた。
政策委員会メンバーのノボトニー・オーストリア中銀総裁は先週、各国の中央銀行の増資必要性に言及。中銀の担うリスク増大を指摘し、欧州の「システム全体で、中銀の資本ベースを強化する必要があるだろう」と述べていた。
翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先:アムステルダム 木下 晶代 Akiyo Kinoshita
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