2010年11月23日火曜日

ブラジル経済の好調と先行き


2010年:GDPランキング8位
2025年:GDPランキング9位
2050年:GDPランキング4位
(GS予想)
人口1億9千万人(世界第5位)
南アメリカ最大の経済大国。
2014年W杯
2016年Wオリンピック

2007年対外純資産がプラス。対外債権国に。

PAC2
2050年の一人当たりGDP
2010年発表 約78兆円の投資(GDPの半分)
2011~14年にかけて行われる。

例:高速鉄道
ブラジル政府はカンピーナス〜サンパウロ〜リオデジャネイロの3都市を結ぶ高速鉄道(TAV)の建設を計画しているが、当初予定から半年以上遅れ7月13日に入札の公示内容が発表された。ルーラ大統領は、2016年のリオデジャネイロ五輪までの開通は十分可能とコメントしている。入札結果は12月16日に発表の予定。

M&A
40件(2005年)→88件(88件)

科学技術の発展
世界4位 エンブラエル(航空機)

金融危機
金融危機の影響を受けながらも、年後半からの雇用情勢の改善、賃金上昇、クレジット拡大などがみられた結果、2009年の小売業界の実質販売額は前年比5.9%増、名目収入は10.0%増となった。危機からの立ち直りの早さ、順調な市場の拡大を裏付けた。

失業率6.2%(2003年13%)


懸念材料
・現大統領のルラ大統領が今年末に退任し、来年1月から初の女性大統領ルセフ氏が就任。現財務相と中銀総裁に留任を要請するなど現状維持に務めるが、独自色をどのようにだしてくるのか不安視されている。


2050年のGDPランキング

Global Economics Paper No: 153 ~The N-11: More Than an Acronym~ March 28, 2007

2025年のGDPランキング

2050年のGDPランキング

Next11の未来

2050年の一人当たりGDP


2007年、今から3年前に出たレポートである。
このレポートによると、2050年には日本のGDPはなんと8位に後退。中国にはもちろん、インド、ブラジル、メキシコ、ロシア、インドネシアにも抜かれるというものである。
日本経済はこのレポート通りに後退するのか。
このレポートが実現せぬよう、日本の未来を再度考える必要があろう。

新5ヵ年計画の骨子


○経済発展と歩調が合った家計の収入の増加
○GDPを一定額生み出すのに使うエネルギー消費量を大幅に削減
○環境保護税の徴収開始
○不動産税の改革推進を研究
○労働争議の処理メカニズムを整備
○海洋権益を保護

数値目標:来春
次期国家主席:習近平(来年秋に就任予定)

投資分野
・軍事:中国GDPの成長に合わせる。
・ITと新エネルギー
・農業:重点中の重点
・不動産投資の抑制
・教育分野の強化

推奨銘柄
レノボ、サンテック、龍源電力、ファーウェイ、シノベルウインド

中国:預金準備率と政策金利


預金準備率:0.5引き上げ。18.5%と過去最高水準。
→インフレと物価高騰の抑制。
※中国の消費者物価は4.4%。


「人民銀の指摘によると、今回の引き上げのねらいは流動性の管理を強化し、通貨の貸出や投入を適切に調整することにあるという。おおまかな試算によると、預金準備率を0.5ポイント引き上げると、銀行システムの流動性資金約3千億元が一時的に凍結されることになる。」
朝日新聞 2010年11月22日14時17分


注目:政策金利と預金準備率は違う!
政策金利…貸し出しと預金の金利
1年物貸出基準金利
1年物預金基準金利
→投資抑制
預金準備率…中央銀行に民間の銀行が預けなければならない比率
→流動性抑制

→中国経済が今過熱気味で投資を抑制しているというわけではない。市場の過剰流動性を抑え、インフレと物価の抑制をしようとしているのだ。

ハンセンは上昇しているが、上海は割安!
「もっとも、これは短期的な要因である。上海総合指数 の市場平均PERは20倍を切っており、本土市場としては依然として割安な水準である。1-9月までの企業業績をみると、A株企業全体で35.1%の増益。通期では多少鈍化したとしても、3割程度の増益は確保できそう。
  株価の水準をみると、上海総合指数 は2007年10月の最高値からみると5割に過ぎず、2009年8月の高値も超えていない状況である。物価、不動産価格が安定してくれば、株価は再び上昇トレンドに戻るであろう。」
利上げではなく預金準備率引上げへ~本土市場はまだ割安感=田代尚機
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=1122&f=business_1122_185.shtml

来年は今割安中国株!~第12次五カ年計画の始まり~

来年は中国の株式が上がるだろう。
第12次5ヵ年計画が始まり、公共投資が活発化するからだ。


以下に第12次5ヵ年計画に関する記事を集めてみた。




対中直接投資、1.5倍に拡大(ダイジェスト)
2010/11/10, , 日本経済新聞 朝刊, 8ページ, , 143文字

 【北京=品田卓】中国国営の新華社によると、中国は、今年が最終年度の第11次5カ年計画中に、海外からの直接投資が4200億ドルに達し、第10次5カ年計画(2001~05年)期間の1・5倍になる見通しだ。この5年で世界4位から2位に浮上し、「世界で最も魅力的な投資先になった」としている。


「習近平氏の中国」世界が注視――外交・安保で保守色も(ニュースの理由)
2010/11/04, , 日本経済新聞 夕刊, 2ページ, 有, 1248文字

 中国の習近平国家副主席が軍の要職である中央軍事委員会副主席に就き、2012年の共産党大会時に胡錦濤総書記の後継者となることが事実上固まった。まずは現政権の基本路線を踏襲する見通しだが、外交安保などでは保守色が強まる可能性もある。
■  ■
 習氏の昇格は07年の前回党大会時に政治局常務委員に抜てきされたときからの既定路線。次期最高指導者への“当確”を意味する軍事委副主席には昨年就任するとの観測があったが、「自ら先送りを求めた」(党関係者)との情報もある。
 習氏は党内で幅広い人脈を持つのが強みだ。習仲勲元副首相の長男で「太子党」(高級幹部の子弟)に属するが、陝西省の農村への下放で苦労し、地方で業績を積み上げてきた。
 控えめな人柄で長老や軍関係者の支持もあり、07年の党指導部人事は「直系の李克強氏(現副首相)を上位に推した胡氏らの案を長老グループがひっくり返した」(同)と言われている。
 コンセンサスを重視するタイプで、自らが最高指導者になっても胡氏の影響力が残り、直ちに基本政策を変えることはなさそうだ。習氏が指導部入りした前回の党大会は胡氏らのグループが人事で一定の譲歩をした代わりに、自らの指導理念である「科学的発展観」を党規約に盛り込む“痛み分け”の格好だった。
 科学的発展観は調和のとれた発展を目指す思想で、先に公表した11年からの第12次5カ年計画の草案もこの考え方が下敷きになっている。改革重視と成長重視で多少の綱引きはあるものの、まずは政権にとって最大の懸案である社会の安定に力を注ぐ見通しだ。
 国際協調路線の胡氏らと微妙なニュアンスの違いを指摘されるのが外交安保だ。日中関係筋は「習氏は地方幹部時代からの交流で日本に親近感を持っている」と期待するが、「主権問題などでは絶対に妥協しない民族主義者」(台湾の情報当局)との評価もある。
 昨年2月のメキシコ訪問では「腹がいっぱいの外国人が我々の欠点をあれこれあげつらう」と国際社会を批判。先月の朝鮮戦争60周年の記念行事では「偉大な抗米援朝戦争は平和を守り、侵略に反抗する正義の戦い」と述べ、韓国世論の反発を招いた。
■  ■
 中国では最近、人民元や南シナ海の問題などをめぐる米国との摩擦拡大で「社会主義国や伝統的な友好国との関係を重視する保守派が発言力を増している」(党関係者)とされ、展開次第でこの傾向が一段と強まる可能性がある。党内各派への目配りを重んじる習氏は政治改革にも慎重との見方がある。
 改革派の知識人からは「国際協調や民主化の進展は海外留学経験者が多い習氏らの次の世代がトップに躍り出るまで待たなければならない」との声も出ているが、世界で存在感を増す大国にそれだけの猶予が許されるのか。国内外の要請と共産党政権のズレは一段と広がっており、次期指導者は初めから難しい対応を迫られよう。
(編集委員 伊集院敦)
【図・写真】胡主席(中)と習副主席(右隣)は北京市内の中国国防大学の行事に参加した(10月27日)=新華社・共同


中国、新5ヵ年計画、来春までに数値目標、拘束性弱い「参考指標」に。
2010/11/03, , 日本経済新聞 朝刊, 7ページ, , 520文字

 【北京=高橋哲史】中国国家発展改革委員会の張平主任は2日、第12次5カ年計画(2011~15年)の実施に関するガイドラインを来年3月までにまとめる方針を明らかにした。草案段階で示さなかった経済成長率などの数値目標を盛り込むが、拘束性の弱い「参考指標」と位置付ける見通し。計画経済時代の名残である5カ年計画は大きな転機を迎える。
 記者会見した張主任は設定する数値目標について「経済成長率、物価、国民生活の水準、環境保護などを含む」と指摘。年末まで国民の意見を募集し、ガイドラインに反映させる考えを示した。
 中国共産党は10月中旬に開いた中央委員会の全体会議(5中全会)で次期5カ年計画の草案を採択した。関係者を驚かせたのは、これまで5カ年計画の柱だった数値目標が1つも入っていなかったことだ。現在の第11次5カ年計画は草案段階から、1人当たり国内総生産(GDP)を00年の2倍に増やすなどの数値目標を示していた。
 5カ年計画は中央が統制する計画経済の象徴だった。改革開放の時代に入っても計画は残ったが、弊害が指摘され「不要論」もくすぶる。新たな数値目標がすべてガイドラインの中にとどまることで、5カ年計画の「指針化」が一段と進むのは確実だ。


来年は中国株高?(まちかど)
2010/11/03, , 日本経済新聞 朝刊, 16ページ, , 264文字

 来年は中国株高?
 〇…来年の中国株の上昇を予想する見方が早くも出始めた。中国では来年から新しい5カ年計画が始まるが、過去20年を見ると計画の2年目まで上海総合指数が大幅に上昇する傾向がある。これに当てはめると株高は再来年まで続くことになる。
 〇…「人事が入れ替わる党大会が計画2年目の秋にあり、それに向けて各地域で功績を競うことが背景にある」(大和証券キャピタル・マーケッツ)。米国でも、大統領選の前年は経済政策が強化され、戦後の16回すべてで株価が上昇している。短期間で政権が代わり、政策効果が長続きしない日本とは対照的だ。


中国は習近平体制で変わるか(大機小機)
2010/11/02, , 日本経済新聞 朝刊, 19ページ, , 936文字

 中国の習近平国家副主席は現在57歳。中央軍事委員会副主席に就いたことで、2012年秋の第18回共産党大会を経て序列トップの総書記を胡錦濤国家主席から引き継ぐ人事がほぼ固まった。
 習氏は高級幹部の子弟を指す「太子党」の代表格である。保守的な既得権益層を支持母体としているため、民主化など大胆な改革には踏み出さないのではないかとの見方が大勢だが、果たしてそうだろうか。
 習氏が総書記になれば、還暦を迎える13年春の全国人民代表大会(国会に相当)で国家主席になる公算が大きい。
 習氏が2期10年にわたり総書記、国家主席を務めるシナリオが今から透けて見える。
 2年後の中国は国内総生産(GDP)で日本を引き離し、世界第2の経済大国の地位が定着しているだろう。軍事力を含め米国を追い上げていくのが習体制時代となる。
 習体制へ移行する第12次5カ年計画(11~15年)の草案には「海洋権益の保護」が明記され、海軍力を増強する方向だ。尖閣諸島沖での衝突事件でみられたような強硬姿勢が強まるかもしれない。
 中国の政治は軍部をどう掌握するかが要諦(ようてい)である。軍に基盤を持たない胡主席は幹部を将軍に昇格させるなど人事権を駆使して軍を管理してきた。
 〓小平と同じ革命第2世代の習仲勲・元副首相を父に持つ習氏は地方勤務時代から軍部とつながりが深い。夫人の彭麗媛さんは人民解放軍所属の国民的歌手である。軍部が対外的な強硬路線に走らないよう指導し、国際協調への道を歩む可能性もある。
 中国の民主活動家、劉暁波氏へのノーベル平和賞決定は政治改革が進んでいないことを世界にさらけ出した。中国政府は強く反発しているが、一般国民の間ではこれをきっかけに民主化が進展することを期待する声もある。
 人口13億の中国で、インターネット人口は4億を超え、2人に1人がメール機能を持つ携帯電話を持ち歩く時代になった。習体制下では言論統制はますます難しい。
 太子党として党内の長老らにも影響力のある習氏だからこそ、言論・報道の自由など政治改革の歯車を回せるかもしれない。だが、中国共産党は現在の党員が7千万人台と総人口の1割にも満たない。
 習体制が国内で広範な支持を得られるかどうかは予断を許さない。
(ノノイ)


中国、成長率並み所得増、新5ヵ年計画、環境税を導入、海洋権益維持に言及。
2010/10/28, , 日本経済新聞 朝刊, 1ページ, , 1103文字

 【北京=高橋哲史】中国共産党は27日、2011~15年の第12次5カ年計画の草案を公表した。家計の収入や所得などの増加ペースを国内総生産(GDP)の伸び率と同じにする目標を盛り込んだ。環境税の導入や海洋権益の維持にも言及した。消費底上げを通じて内需を拡大し、バランスの取れた成長を目指す。ただ、所得増に向けた賃上げや新税の導入は日本企業を含む中国進出企業への負担増につながりかねない。(関連記事6、7面に)
 18日に閉幕した第17期中央委員会第5回全体会議(5中全会)で採択したもので、国営新華社通信を通じ公表した。最終的な計画は11年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で正式に決定する。
 今回の草案は、従来の5カ年計画が示してきたGDP成長率など具体的な数値目標は一切入っていないのが特徴だ。今年末で期限が切れる現行の5カ年計画にあった「経済建設を中心とする」との文言も削除。高めの経済成長にはこだわらず、環境に配慮し、消費と投資のバランスを取るなど成長の「質」を重視する考えを鮮明にした。
 都市部と農村部の格差が広がり、内政の不安定要因にもなっている国民の収入については「都市住民と農民の収入がまんべんなく速いペースで増えるようにする」と表明し、内政の最重要課題との認識を示した。これまでGDP成長率を下回りがちだった収入の増加ペースを「経済発展と歩調が合うように努力する」との目標を初めて明記した。
 中国の1~9月のGDP成長率は前年同期比で実質10・6%だったのに対し、個人収入の伸び率は農村が同9・7%、都市が7・5%だった。努力目標とはいえ、中国に製造拠点を置く日系など外資系企業が今後、一段の賃上げを迫られるのは必至だ。
 今年に入って賃上げを求める労働争議が全国で相次いだことを踏まえ、「労働争議の処理メカニズムを整備する」との方針も表明した。
 環境対策に関しては、単位GDP当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に減らす考えを盛り込んだ。温暖化ガスの排出に課税する「環境保護税」の導入も明記し、環境対策の強化で持続可能な成長を目指す方針を打ち出した。
 人民元改革をめぐっては「市場の需給に基づく管理変動相場制を改善する」とし、改革を継続する姿勢を強調した。
 外交・国防政策に関しては「海洋の権益維持」を明記したうえで、経済発展と同じ速さで軍事力を増強するとした。
新5ヵ年計画の骨子
○経済発展と歩調が合った家計の収入の増加
○GDPを一定額生み出すのに使うエネルギー消費量を大幅に削減
○環境保護税の徴収開始
○不動産税の改革推進を研究
○労働争議の処理メカニズムを整備
○海洋権益を保護


新5ヵ年計画――「海洋資源の保護」重点、尖閣など強気の姿勢明示。
2010/10/28, , 日本経済新聞 朝刊, 6ページ, , 595文字

 【北京=佐藤賢】中国共産党の新5カ年計画の草案は、海洋戦略にも触れ「海洋の開発、規制、総合管理の能力向上」を打ち出し「我が国の海洋権益を保護する」と明記した。石油や天然ガスなどの海洋資源を合理的に開発・利用し、離島を保護する方針も強調した。
 現在の5カ年計画では「海洋資源の保護」などと短く触れただけだったが、海洋戦略に重点を置く立場を鮮明にした。尖閣諸島問題や東シナ海のガス田開発、南シナ海の南沙(英語名・スプラトリー)、西沙(同パラセル)両諸島の領有権争いなどを巡り、強気で臨む姿勢を明示した格好だ。
 外交政策を巡っては、国際協調を推進する原則を掲げながらも、中国の主権や利益の擁護に力点を置き「我が国の海外の国民と企業の正当な権益を保護する」と指摘。途上国との協力を強化し、途上国の利益を守るとした。中国のイメージ改善を促す広報・文化戦略「パブリックディプロマシー」の強化や、ソフトパワーの向上も盛り込んだ。
 国防政策に関しては、経済発展の速度と歩調を合わせて軍事力を整備する「富国と強軍の統一」の方針を表明。有事の際のヒトやモノの動きを統制する規定を盛り込んだ「国防動員法」の成立を受け、国民を軍の後方支援や社会秩序維持の任務に当たらせる体制を整備する方針を示した。
 教育政策では「中華民族の偉大な復興」を信念とした教育を強化し、愛国や法律順守などの意識を養うことを目標に挙げた。


新5ヵ年計画――戦略産業育成へ支援、ITや新エネ・新素材、技術力底上げ急ぐ。
2010/10/28, , 日本経済新聞 朝刊, 7ページ, , 651文字

 【北京=多部田俊輔】中国共産党は第12次5カ年計画の草案で、IT(情報技術)や新エネルギー車、新素材など7分野を戦略的産業と位置付け、自主開発力の強化を盛り込んだ。現行の5カ年計画でも「自主創新」を掲げて中国企業の競争力強化を後押しし、一部産業では世界大手も誕生した。だが「科学技術の創新能力は弱く、産業構造は非合理的」(同草案)。政府の全面支援で技術力やブランド力の底上げを急ぐ。
 中国企業が世界シェアの上位に食い込む例は増えた。パソコンで聯想集団(レノボグループ)が09年の世界シェア4位を占め、通信設備では華為技術(ファーウェイ)が同2位に駆け上がった。太陽電池で尚徳太陽能電力(サンテックパワー)が同2位、風力発電設備では華鋭風電科技(シノベルウインド)は同3位を占める。
 中国勢は高速鉄道や通信インフラ分野での覇権も目指す。政府は資金支援を強化し、独自の知的財産権を保有しているとも主張する。しかし、高速鉄道では外資企業幹部は「日独の技術がベース」と反論し、通信も米企業が中核技術を握る。
 「中国側は海外から買った技術を改良して自主開発したと主張する場合があり、中国企業と海外企業の間で知的財産権を巡る争いが増えている」。中国の大手法律事務所の弁護士は明かす。海外動向に詳しい中国企業幹部は「政府は地道に中国企業の技術開発を支援すべきだ」と語る。
 草案は生命科学やナノテクノロジーなど新分野での基礎研究強化や、知的財産権戦略にも言及。技術力・開発力の底上げへ総合的な戦略が重要になっている。


新5ヵ年計画の要旨。
2010/10/28, , 日本経済新聞 朝刊, 7ページ, , 818文字

 中国の新5カ年計画草案の要旨は次の通り。
 1、経済発展方式の転換 5カ年計画の制定は科学発展を主題とする。今後の5年の目標は(1)安定した比較的速い経済発展(2)国内総生産(GDP)を一定額生み出すためのエネルギー消費量や二酸化炭素(CO2)排出量の大幅削減(3)経済発展と歩調が合った住民収入の増加(4)顕著な低所得者の収入増加と貧困人口の減少(5)社会の一層の安定
 2、内需拡大戦略 内需、とりわけ消費を拡大。マクロ調整の科学性と予見性を高め、経済(成長率)が大きく上がったり下がったりすることを避ける
 3、農業現代化の推進 農業、農村、農民問題は党の仕事の重点中の重点
 4、現代産業システムの発展と産業の核心的競争力の向上 IT、省エネ・環境保護、新エネルギー、生物、高性能製造設備、新素材、新エネ車を戦略産業に位置付け。海洋発展戦略を制定・実施。海洋の開発、規制、総合管理の能力を向上。合理的に海洋資源を開発・利用し、離島や海洋の生態環境を保護。我が国の海洋権益を保護
 5、都市化の推進 不動産市場の投機需要を抑制し、不動産業の安定した発展を促進
 6、資源節約型社会の建設加速 「(先進国と途上国の)共通だが差異のある原則」を堅持し、気候変動の国際協力に積極的に推し進める
 7、人材強国戦略 教育改革を加速。人材強国を建設
 8、公共サービスシステムの設立 労働争議の処理メカニズムを完備
 9、文化のソフトパワー向上 中華民族の偉大な復興を理想・信念とした教育を強化し、愛国や法律順守に導く
 10、社会主義市場経済体制の完備 環境保護税の徴収開始。不動産税の改革推進を研究。市場の需給に基づく管理変動相場制の完備。預金保険制度の設立
 11、対外開放の水準向上 貿易収支の均衡
 12、計画実現へ奮闘 富国と強軍の統一の実現。我が国の主権、安全、発展利益の保護。途上国との協力強化。海外の公民と企業の正当な権益の保護。公共外交の強化


新5ヵ年計画、中国、内需主導の成長重視、数値目標は盛らず、環境対応や消費に軸足。
2010/10/28, , 日本経済新聞 朝刊, 7ページ, 有, 1720文字

 【北京=品田卓】中国が高成長から成長の質を重視する経済路線に転換し始めた。共産党が27日公表した「第12次5カ年計画(2011~15年)の草案」によると、国内総生産(GDP)伸び率など具体的な数値目標が消え、環境重視や貧富・地域間の格差是正などバランスのとれた成長をめざす姿勢を鮮明にした。消費底上げなど内需拡大や貿易黒字削減も強調。国内の社会不安や国際世論を意識した内容になっている。(1面参照)
 中国の高成長が鈍れば、世界経済にも影響を与える。賃上げ圧力が高まれば進出企業のコスト増につながり、生産拠点の見直しを迫られる。一方、内需が拡大すれば、日本など海外企業にとっては対中輸出の増加が見込めるほか、環境ビジネスの機会も広がる。
 中国が経済の質重視を鮮明にしたのは、高成長だけを追い続けると、様々な問題でバランスを崩し、いずれ経済が行き詰まるとの危機感が強まったためだ。経済成長を持続可能な巡航速度にして、いびつだった経済の構造改革を進める必要があると判断した。
 その柱の一つが「人と自然の調和のとれた発展」だ。環境税の徴収開始やエネルギー効率の大幅改善などを明記した。「都市と農村、地域間、経済と社会のバランスのとれた発展」も柱のひとつで、富の再配分を強化する姿勢を示した。
 消費拡大も持続可能な成長には不可欠。今年1~9月期の輸出額は1兆1346億ドル(約7兆6000億元)で、GDPの3割弱に相当する。輸出依存度を減らし、内需を拡大させることで、国内市場を育成する。そのためにサービス産業や運輸部門などの強化策も示した。
 公共投資など投資依存が高い構造を改革するうえでも国内市場の育成は欠かせない。1~9月期の固定資産投資は19兆2228億元で、GDP比7割もある。
 今年は第11次5カ年計画の最終年。5年前の2005年のGDPは18兆4937億元で、今年はこの2倍になる見通し。だが家計収入の水準はそれに見合うほど上がっていない。しかも、貧富の差を示す指標として使うジニ係数は中国は0・4台後半に拡大。社会が不安定になる警戒ラインの0・4を超え、危険ラインの0・5に近づいている。
 胡錦濤政権はこれまでも「和諧(わかい=調和のとれた)社会」をスローガンに格差対策を進めてきたが、大きな成果には結び付いていない。社会の安定最重視を掲げるなか、格差問題解決が緊急課題になっている。
専門家の見方
労働争議多発など不安
 熊谷亮丸・大和総研チーフエコノミスト 中国は高い経済成長を追求する路線から、環境や格差などにも目配りした持続可能な成長にかじを切りつつあるようだ。成長の原動力も外需から内需に移行していく。地域間格差を埋めて都市化を進めれば、内需主導の成長も期待できる。
 日本企業は中国を組み立て加工の拠点と位置づけてきたが、内需拡大に伴って市場としての役割が高まっていく。食品などの生活必需品を製造する企業の重要性が増すことが予想される。
 人民元改革や国際収支の均衡を目指す方針は国外向けのメッセージという側面がある。中国当局は急激に円高が進んだプラザ合意後の日本経済を十分研究しており、人民元改革にはあくまで漸進主義で臨むだろう。大きなリスクはインフレだ。労働争議の多発など不安要因も出始めている。
中国企業の成長映す
 川西重忠・桜美林大学北東アジア総合研究所所長 家計の収入の増加率を成長率並みに引き上げることを明記したが、数年前から農村の収入増などバランスの取れた成長を目指す動きが徐々に進んでいた。2008年には労働者の権利保護を強化する「労働契約法」が施行、外資への優遇税制も縮小するなど、内需拡大に軸足を移していた。これは未熟だった中国企業が技術、経営の両面で成長してきたことも大きい。こうした流れに今後も変化はなく、中国側の様々な方針に一喜一憂せずに日本企業はブレのない戦略で市場開拓することが重要になる。家計収入の底上げ明記は格差社会の解消を掲げる胡錦濤国家主席が独自性を打ち出したい、という思いもあったのではないか。
【図・写真】中国は「人と自然の調和のとれた発展」を経済の質重視の柱のひとつにした(上海)=ロイター

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2010年11月14日日曜日

6665 エルピーダメモリ


現在値 891円

指標
・PBR 0.69倍
・PER 58.65 (精密機器23.20)
・予想 4.52倍


by 株価チャート「ストチャ」



世界を圧巻する韓国企業。日本の電機業界は大きな差をつけられた。しかし、その中でも巻き返しを図る企業が日本にある。

日本唯一の専業DRAMメーカー、「エルピーダメモリ」だ。

DRAMというコンピュータのメモリメーカーを製造している会社。世界シェアは3割だ。日本はかつて圧倒的なシェアを占めていたが、今では低コスト化に成功した韓国にそのシェアを占められている。エルピーダメモリはそのシェアを取り戻そうと台湾企業と提携。コストの効率化を進め、1位韓国サムスン電子、2位ハイニックスを猛追する。

DRAMとはコンピュータに欠かせないメモリ。PC需要が拡大し、市場は徐々に大きくなっていったが、最近は供給過剰によって価格が下落している。そこでエルピーダは11月上旬、エルピーダメモリは過剰なDRAMを生産調整、減産し、代わりにタブレット用のDRAM生産のための設備投資を行う。今期の業績は大幅な上昇は難しいが、その後が勝負だ。

現在開発を進めている30nmプロセス台の2Gビット DDR3 SDRAMについては2010年12月よりサンプル出荷を開始し、早ければ同時期に、遅くとも2011年第1四半期中には量産を計画しているとした。

「タブレットPCはタッチパネルが不足して生産制限が成されているが、部材が揃えば一気に拡大し、2013年ころにはスマートフォンの半分くらいのDRAMを消費する」とエルピーダ坂本社長は言う。
消費者のマインドはノートPCからスマートフォンやタブレットPCへとシフトしているとの見方を示す。また、中国などではタブレットPCを教科書として使う(他のアプリケーションは一切入れない)ことを国に対して働きかけようとしているとのことで、年間2000万人が就学することを考えれば、自動的にそれだけの需要が生まれることとなるという。

ここが低コストによって市場シェアを拡大した日本企業の腕のみせどころだ。技術力を上げ、DRAMを高性能・微細化することによって生産コストを下げ、製品の品質を高めるのである。

海外売上比率は82%。日本企業ではもう殆どない。経済成長の余地が比較的小さい日本だけでなく、世界で勝負をするのがエルピーダ。今回円高の影響を受け、第二Qの業績は前期比で落ちたが、まさに今為替の転換期が訪れている。

株価も割安。これからが勝負だ。


チャート分析
・貸借倍率下落傾向
→倍率は未だ高水準だが、需給は徐々に良い方向へ。

・PBR1倍以下。
・予想PERも1桁。
→エルピーダメモリはまだまだ割安水準。


参考文献
「DRAMや液晶パネルでなぜ日本は韓国メーカーに抜かれたのか?」http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/38c54bc2ec6b641c56cc6703f64eab5f

The eurozone’s stark lessons for the G20 By Alan Greenspan


Published: November 10 2010 23:00 | Last updated: November 10 2010 23:00

As the Group of 20 meets to seek common ground on protectionism, this year’s euro crisis will hover over their deliberations. The crisis that erupted in Greece has again exposed the fragility of a key element of currency-pooling arrangements: the important value created by a pooling of interests tends to be distributed disproportionately in favour of the financially less collegial members of the pool. Thus, unless restrained, too often, some members will try to exploit their advantage, as Greece brazenly did in recent years.

The restraint imposed on the euro area by the stability and growth pact was supposed to limit euro-denominated sovereign borrowings. The pact, confronted with its first big test in 2003, failed. The cumulative consequences of the failure emerged this year as a fiscal crisis in Greece and other euro members. The benevolent mood accompanying the creation of the euro was nowhere to be seen.

Fortunately, threats to European monetary union, so far, have been successfully fended off by the herculean actions of the European community assisted by the International Monetary Fund. Currency problems have now spread to the global financial system which, like the euro area, requires adherence to certain rules to sustain it. It is not only the well publicised friction between China and America – both may be right about each other – but also by the drive for competitive export advantage through currency manipulation in a world where a zero global current account balance permits none.

China has become a major global economic force in recent years. But it has not yet chosen to take on the shared global obligations that its economic status requires. Chinese policymakers still believe, incorrectly in my view, that if they cannot keep their currency suppressed and exports booming, their country faces economic contraction and dreaded political instability. But China also realises it needs the global market to prosper, and should widespread protectionism take hold, its prosperity would likely be one of its large casualties. China seems to be seeking a balance in which the renminbi appreciates against the dollar, but only modestly.

America is also pursuing a policy of currency weakening. The suppression of the renminbi and the recent weakening of the dollar are, of necessity, producing firming exchange rates in the rest of the world to, as they see it, the rest of the world’s competitive disadvantage. Something has to give in this arena of zero-consolidated current account balances.

One of the least heralded events of the past two years has been the recovery and vigour of global trade. The ratio of global exports to gross domestic product that fell sharply during the crisis had fully recovered by the second quarter of this year. Preliminary estimates for the third quarter, however, suggest a modest slowing.

For a half century or more, global trade has risen faster than GDP. That is one reason the Chinese development model, based on rapidly increasing global export markets, and earlier, the paradigm of the Asian tigers, have been so successful. But even without protectionism, there are clear upside limits to the growth rate of global trade. Protectionism would accelerate that slowing.

As G20 members gather, they appreciate that despite heated political rhetoric, protectionism has failed to emerge in full force. This may have been one of this year’s most pleasant surprises. The G20, in April 2009, in perhaps its most productive meeting, emphasised support for unfettered global trade. The need to convert those uplifting words to immediate action will dominate this week.

The global trading system can tolerate a modest amount of protection and still, in conjunction with the financial system, tend to direct much of the world’s savings to the most potentially productive investments. Typically, that elevates global productivity growth and living standards. But the flaws in the global trading system are large and worrisome.

We should not wish to inhibit those market-determined capital flows that reflect the cross-border shifting of resources that enhances global productivity. These flows are the big determinants of desirable realignments of exchange rates over time. But we should discourage reserve accumulation whose sole purpose is to suppress exchange rates for competitive export advantage. This, of course, has been the market-distorting consequences of China’s accumulation of over $2,000bn of reserves since 2000.

What the G20 can initiate through the IMF is a set of rules that limits the accumulation of reserve assets and sterilisation of capital inflows. China may need an officially sanctioned extended adjustment period, and provisions may be required to deal with unsterilised capital inflows threatening smaller markets. But that would be far easier to monitor and control than a stability and growth pact that requires control of central government revenues and spending.

Delimiting a country’s ability to suppress its exchange rate (reserve accumulation limits) or to blunt the effect of unwanted capital inflows (sterilisation) may not fully dissuade a country bent on other protectionist forms. But if the G20 is serious in pledging to sustain open multilateral trade and the international financial system that fosters it, it should be willing to forgo an element of sovereignty to achieve net gains for all.

The writer is former chairman of the US Federal Reserve

2010年11月13日土曜日

PBR1倍未満の銘柄、海運・化学が上位に


下期増益見通し 郵船は経常利益3倍

2010/11/13付
日本経済新聞 朝刊
STOCK α

 2011年3月期下期(10年10月~11年3月期)の業績が当初の想定以上に好調で、株価に割安感のある銘柄はどれか。PBR(株価純資産倍率)が1倍未満で、下期の経常利益予想が期初予想を上回る銘柄を、下期の経常増益率の大きい順に並べたところ、海運や化学が上位に入った。

 対象は東京証券取引所第1.2部に上場する3月期決算企業(金融除く)で、株式時価総額が200億円以上の会社。PBRが1倍未満で、11日時点の今期業績予想をもとに計算した下期の経常利益見通しが期初計画を上回る企業を選んだ。前年下期の経常損益が赤字の会社などは除いた。

 ランキングの上位に目立ったのは、アジア経済の拡大の恩恵を受ける海運、化学など。

 1位の日本郵船の経常利益は前年同期比3倍の401億円となる見通し。期初予想の310億円(2.3倍)から増益幅が拡大する。アジアで生産した日用雑貨や機械などの欧米向け出荷が増加。下期のコンテナ船事業の経常損益は83億円の黒字と、前年同期の赤字から大幅に改善する。

 PBRは5月以降、0.8~0.95倍程度で推移している。円高による利益目減りなどが懸念されているためだが「アジアと北米を結ぶ航路の市況が需要期にあたる年末も安定していれば、投資を考えたい」(国内金融機関)との声があった。

 化学では東京応化工業が16位、三菱ケミカルホールディングスが17位、積水化学工業が20位に入った。

 東応化は主力の材料事業で韓国などアジアを中心に半導体向けレジストの販売が好調で、下期の経常利益は44%増の23億円と期初計画から1割超拡大する見通し。

 三菱ケミHDはアジアでの旺盛な液晶テレビの需要に支えられ、関連部材の販売が伸びている。下期の経常利益は41%増える見通しだ。

 株価が割安なのは「日本の化学会社は規模の面で欧米に見劣りするため」(りそな銀行の戸田浩司チーフ・ファンド・マネージャー)。ただ「各社の業績は事前の想定を大きく超え、株価は水準訂正に向かう」(国内投資顧問)との見方もある。

 株式市場では、先進国の金融緩和による資金流入が期待されている。「投資家のリスク許容度が増せば、業績好調で割安な銘柄が見直される地合いになる」(ちばぎんアセットマネジメントの奥村義弘調査部長)との指摘があった。

三井住友・みずほ、4~9月純利益3倍超

国債売買益が膨らむ、通期見通しは慎重

2010/11/13付
日本経済新聞 朝刊

 三井住友フィナンシャルグループ(FG)とみずほFGの2メガバンクは12日、2010年4~9月期決算を発表した。三井住友の連結純利益は前年同期比3.4倍の4174億円と過去最高。みずほも同3.9倍の3417億円と過去2番目の高水準だった。企業倒産が減り、不良債権処理損失が少なかったほか、金利低下で国債売買益が膨らんだ。ただ銀行を取り巻く経営環境は厳しく、通期見通しの上方修正には慎重さが目立つ。

 4~9月期は中小企業金融円滑化法の影響などで企業倒産が減少したため、不良債権に絡む損失が前年同期と比べて大幅に減り、業績の押し上げ要因となった。三井住友銀行は貸倒引当金などの不良債権処理損失が前年同期比で1100億円以上減り、433億円にとどまった。みずほでは取引先企業の業績が改善したことなどから、不要になった引当金が利益として戻ってきたため、傘下3行合算で252億円の戻り益を計上した。

 この4~9月は長期金利が一時1%を割るなど金利が低下し、保有国債の価格が上昇。これに伴い三井住友では国債などの売買益が3.9倍の1511億円に膨らんだ。みずほは7.7倍の1262億円を計上した。

 この結果、本業のもうけを示す実質業務純益(傘下銀行ベース)は三井住友が31%増の4932億円。みずほは3行合算で32%増の4451億円となった。

 4~9月期の純利益が5月時点の当初予想を大幅に上回ったのを踏まえ、11年3月期通期予想も三井住友は5400億円(当初予想は3400億円)、みずほは5000億円(同4300億円)にそれぞれ引き上げた。ただ4~9月期の利益水準は通期予想に対して、三井住友が77%、みずほは68%に達しており、「上半期に比べて下半期の業績はかなり慎重にみている」(みずほFGの塚本隆史社長)。業績上方修正にもかかわらず、配当の増額は見送った。

 景気の減速懸念や親密ノンバンクの苦戦など収益環境の悪化に加えて、大幅に厳しくなる新自己資本比率規制への対応が控えており、内部留保の積み増しを優先する構えだ。

(上) 米中緊張はらむ共存


2010/11/12付
日本経済新聞 朝刊

 首脳が集まる国際会議では、たいてい「合意文書」という名の妥協の産物ができあがる。だが、国益をかけた激しい駆け引きはその舞台裏で交わされる。今週の20カ国・地域(G20)サミットとアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議も例外ではない。

 「米中関係は強まり、世界的な課題も話し合うようになった」。オバマ大統領がこう評価すれば、胡錦濤国家主席も「中国は米国との対話や連携を増やす」と応じる。ソウルでの米中首脳会談は、なごやかに始まった。

「対話より圧力」

 これはつかの間の握手にすぎない。実際にアジア太平洋という舞台では、米国と中国の覇権争いの足音が聞こえる。流れを決定づけたのが、南シナ海を「内海」であるかのように位置づける中国の行動や、尖閣諸島沖の衝突事件を受けた日本への強硬な対応だった。

 「今年、政権内では対中政策をめぐる論争が続いてきたが、対話より圧力に軸足を置くしかないという結論に落ち着いた」。米政府当局者はこう解説する。中国の軍事、政治力の膨張に対応するために「日韓やインド、ベトナム、オーストラリア、インドネシアとの協力を強める」と語る。

 そんな対中戦略の見取り図はそのまま、オバマ大統領の今回のアジア歴訪の足取りに重なる。

 まず訪れたのは中国を潜在的脅威とみなすインドだった。民主主義の協力相手として、シン首相と抱擁を交わし、学生との集会では「21世紀の歴史は米国とインドでつくられる」と持ち上げた。

 次の訪問先にインドネシアを選んだのも対中の思惑があった。同国は東南アジア諸国連合(ASEAN)の4割に当たる人口を抱え、来年はASEANの議長国になる。インドネシアがどう振る舞うかは、米中のアジア力学を左右する。

 「どの国も国際的な枠組みとルールに沿って行動すべきだ」。オバマ氏はユドヨノ大統領との共同記者会見で、こう力説し、中国をけん制した。

 米側が攻勢を強めるにつれ、それに対抗しようとする中国外交の車輪もめまぐるしく回る。

 オバマ氏がインドネシア入りする前日の8日。ジャカルタの空港にスーツ姿の中国人らが降り立った。呉邦国全国人民代表大会委員長(国会議長に相当)が率いる中国代表団だ。呉氏はオバマ氏に先んじて66億ドルものインフラ支援を約束した。

 中国は欧州の取り込みも急ぐ。胡主席はG20の直前にフランスを訪問。これに合わせて、中国企業が仏企業から100億ユーロを超える航空機や核燃料などの購入契約を結んだ。9~10日にはキャメロン英首相と経済界の首脳50人を北京に招いた。

 アジアを舞台にパワーゲームを繰り広げる米中。中国には国力を増し、いずれは米主導の秩序を変えたいという目標もある。「いまの国際システムは米国に牛耳られている。この土俵で中国が台頭しようとしても『責任大国』の名のもとに米国から色々な要求を突きつけられ、阻まれてしまう」。中国政府の外交ブレーンはこう漏らす。

 もっとも、経済的に深く結びつき、北朝鮮・イラン問題での協力も欠かせない米中に衝突の選択肢はない。先月30日にはクリントン国務長官が訪問先のハノイから中国・海南島に立ち寄り、胡氏の側近である戴秉国国務委員と会談した。米中は疑念を抱きながらも、来年1月の胡氏の訪米に向けて個別の懸案では妥協を探るとみられる。

軸定まらぬ日本

 そうしたなか、日本は外交の軸が定まらず、立ちすくんでいるように見える。「菅直人首相は今回の尖閣問題を教訓に、対中戦略で日米がしっかり連携する必要性を痛感した」。菅首相の周辺はこう打ち明ける。

 菅首相は13日に予定される日米首脳会談で同盟修復の道筋をつけ、明確な安保像を描けるのか。アジアの力学が揺れるなか、もはや立ち止まっている時間はない。

(編集委員 秋田浩之)

(中)危うい協調、頼みは成長

2010/11/13付
日本経済新聞 朝刊

 

ソウルから横浜へ。G20サミットを終えてアジア太平洋経済協力会議(APEC)に大移動する指導者は「妥協から連携へ」と頭の切り替えを迫られる。

 12日午前3時。事務方が11日夕までに固めるはずの首脳宣言案がやっとまとまった。米国と中国の対立が解けず、経常収支の不均衡を直す目安をいつまでに作るかは首脳の判断に託された。

 文言調整の焦点だった為替問題。素案には「通貨の競争的な過小評価を避ける」と人民元の切り上げを迫る強い表現を盛り込んだ。だが中国の巻き返しで一般的な表現の「切り下げ」に戻された。

目先の論争次々

 同時不況の脱出で世界が結束した米ワシントンから2年。G20会議は変質した。韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が意図した金融の新しいルール作りなどは脇役に。代わって通貨摩擦や不均衡といった、眼前の論争の仲裁に追われた。

 人民元改革の遅れ。米のドル安容認。欧州の財政不安。アジア諸国の為替介入……。対立の構図は「先進国と新興国」といった単純な姿ではない。米の量的緩和には、中国やブラジルに加えてドイツのメルケル首相までも批判に参戦した。

 「不ぞろいの成長と広がる不均衡が、協調を乱す行動への誘惑をかき立てている」――。首脳宣言は異例の表現で抜け駆けをけん制した。通貨安競争と保護貿易を排除する。経常黒字国は内需を、赤字国は貯蓄をふやす。いつも通りの政策協調だが、実効性を担保する手段は乏しい。

 「グローバルな会議を地域のAPECより先に開くのは当然」と韓国が先に開いたG20。繕った協調には危うさが伴う。むしろ頼みにできるのは、APECのような枠組みを生かしてアジアの成長を取り込む戦略だ。

 安価な生産拠点だったアジアは、人々の所得増加で「世界の工場から世界の市場へ」(行天豊雄・元財務官)と変容しつつある。成長低迷にあえぐ先進国が、経済連携という誘い水で、そのアジアを囲い込もうとあれこれ駆け引きを始めている。連携というより競争という言葉がふさわしい。

 環太平洋経済連携協定(TPP)をひっさげて「アジアへの関与を強める」と強調するオバマ米大統領。12日の記者会見で、親密な国家リーダーとして真っ先に挙げたのは「インドのシン首相」だった。APEC参加21カ国・地域の経済規模は世界の53%。アジアが高成長を続ければ、存在感は飛躍的に高まる。

 韓国との自由貿易協定を結んだ欧州連合(EU)も米主導のTPPに注目し「参加を探る国に間髪を入れず接近している」(経済産業省)。東南アジア諸国連合に日中韓が加わる枠組みなども含め「様々な連携が並列で動きながら進む」と伊藤元重東大教授は言う。

迅速さと意志を

 日本のスピード感がここで問われる。「資金も技術もある日本には、有力な市場として想像以上に期待が大きい」と野村ホールディングスの氏家純一会長は言う。シンガポールのリー・シェンロン首相は「日本が参加すれば重みが増す」とTPP陣営に手招きする。

 今月9日。TPP参加の9カ国と日本政府による局長級の情報交換会は「あたかも『9プラス1』の面接といった感じだった」(政府筋)。日本が聞き出せたのは9カ国の交渉内容や日程など基本情報だけ。菅直人首相は議長国の立場で9カ国の首脳と会う方向だが、そこで何を語るのか。

 アジアの経済力学は猛烈な勢いで変化している。APECの地元開催という機会に明確な意志とアイデアを出せなければ、日本は「アジアの時代」という追い風に本当に取り残される。

(編集委員 菅野幹雄)

焦点:4兆元の中国景気刺激策が終了へ、不良債権など置き土産も

2010年 11月 8日 15:46 JST

 [北京 5日 ロイター] 中国が2008年11月9日に発表した2年間で4兆元(6000億ドル)の景気刺激策は、終了が近づいている。当初は、刺激策が実行できるのか懐疑的な見方もあったが、中国はこの間、早急に2けた成長を回復、世界経済の立て直しに貢献した。ただ同時に、不良債権や無駄な公共投資という問題も残した。

 景気刺激策の終了が迫るなか、当局者や専門家は、この巨額支出という実験が中国経済に与えた意味について、問い直そうとしている。

 中国国務院(内閣に相当)のアドバイザーを務めるChen Quansheng氏は「薬を飲めば副作用は避けられない」との見方を示す。つまり刺激策の評価は、良い面も悪い面もあった、ということだ。

 UBSの中国担当チーフエコノミスト、Wang Tao氏は「刺激策の主な利点は成長を持続させたことだ。雇用にとって有益であり、中国で危機が起きるのを防いだ」と指摘する。「しかしコストもあった。刺激策の最終的な規模はおそらく大きすぎたのだろう。そのため、不良債権や資産配分の失敗という将来にわたる問題が生まれてしまった」と述べた。

 中国の政策当局者は、刺激策を高く評価している。温家宝首相は9月に「刺激策は中国の現実に合っており、タイムリーで強力、かつ効果的だった」「正しい決定であり、われわれにとって、将来の世代にとって、そして世界全体にとり有益だった」との認識を示している。

 <刺激策、経済への影響配慮し段階的に終了へ>

 中国の景気刺激策は発表後、効果がすぐさま現れた。銀行の新規融資は11月、前月の3倍となり、2009年半ばまで増加が続いた。

 中国経済や世界の市場への影響に配慮し、刺激策は段階的に終了に向かうだろう。また、大規模プロジェクトの多くは長期的なもので、すぐになくなるわけではない。

 前述の国務院アドバイザーのChen氏は「政府の投資や銀行貸し出しは来年もその翌年も、堅調さを維持するだろう。刺激策で建設が始まった港湾や高速道路、鉄道は、完成までに何年もかかる」と話す。

 こうした刺激策の持ち越しがなくとも、中国では政府の投資は単に危機対策ツールではなく、経済発展に欠かせないものとなっている。

 クレディスイスのエコノミスト、Dong Tao氏は、刺激策が終わっても、インフラの近代化や医療や教育など社会保障分野へは今後も支出が続く、と指摘。「中国はもはやパニックの状態ではない。焦点は、刺激の加速から構造改革に移っている」との見方を示している。

 中国政府はすでに、金融政策を正常な状態に戻しつつある。銀行の貸し出し抑制を実施したほか、銀行の預金準備率は今年、4回引き上げている。また、先月には、政策金利をほぼ3年ぶりに引き上げた。

 財政省の研究機関のディレクター、Jia Kang氏は「われわれは危機後の時代の出口戦略を考える必要がある。段階的に静かに行う」と述べた。

 (Simon Rabinovitch記者、Zhou Xin記者;翻訳 吉川彩;編集 宮崎亜巳)

米FRBの金融政策、世界の景気回復損なう恐れ=中国人民銀幹部

2010年 11月 12日 01:36 JST

 [ソウル 11日 ロイター] 中国人民銀行(中央銀行)幹部は11日、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和は世界経済の回復を弱める恐れがあるとの見解を明らかにした。

 人民銀の国際部門ディレクター張濤氏は20カ国・地域(G20)首脳会議の会場で記者団に対し、FRBの金融政策は多くの国にとって「大きな懸念要因」になっているとし、主な準備通貨を持つ国は自国の政策が世界に及ぼす影響を考慮すべきだと指摘した。

 「(米国は)自国の病気を治療するために他国に無理やり薬を飲ませるべきでない」と語った。

 さらに、FRBの政策に起因する秩序なき資金フローが新興国に打撃を与えかねないとの考えを示した。

 「新興国に資本が流入すれば、資産価格が大幅に上昇し外貨準備も急拡大する可能性がある。多くの国はこうした懸念を抱いている」と指摘。「無秩序な国際的資本フローに対し、間違いなく新興国は非常に脆弱(ぜいじゃく)だ。世界経済の回復に新興国は重要であることから、世界経済に対する下振れリスクが大幅に高まる」と説明した。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18130120101111

欧州国債 利回り急低下 5カ国共同声明に反応

2010/11/13付日本経済新聞 夕刊 【ロンドン=松崎雄典】12日の欧州市場では、前日まで急上昇していた財政再建国の国債利回りが大幅に低下した。アイルランド国債10年物の利回りは8.5%と前日に比べ0.7%強低下し、ギリシャなど南欧諸国の利回りも大きく下げた。英仏独など欧州主要5カ国が同日の共同声明で、2013年半ばまでは金融支援を受ける国の国債保有者が負担を被らないと強調したことで、市場の不安がやや後退した。 アイルランド国債の利回り低下は、1日の幅としては欧州連合(EU)がギリシャ支援を正式決定し、欧州各国の利回りが急低下した5月10日以来の大きさ。 12日はポルトガル国債の10年物利回りも7.0%と前日比0.3%強低い大幅な低下。ギリシャは同0.2%低い11.5%、スペインは同0.1%低い4.6%だった。 共同声明は、13年半ば以降に始まるEUの新たな金融支援の枠組みでは民間負担を検討するものの、現状の仕組みである欧州金融安定基金(EFSF)では負担がないことを明確にした。ただ、ロイター通信が12日にアイルランドが金融支援の要請へEUと交渉に入ったと報じ、同国財務相らが否定するなど、不安の火種はくすぶっている。

2010年11月8日月曜日

世界の株式市場、時価総額2年ぶり高水準 危機直前を6兆ドル超す 膨張マネー、新興国へ

2010/11/4 22:51日本経済新聞 朝刊1015文字

 世界の株式市場の時価総額が拡大している。主要市場の合計は25日時点で、推計52兆ドル強(約4200兆円)と2年4カ月ぶりの水準に回復、2008年9月の金融危機直前を6兆ドル上回った。米国などの金融緩和観測で膨らんだ投資資金が成長期待の高い新興国株式に流入。一部は景気の先行き懸念が残る欧米など先進国株にも回帰し始めており、マネー主導の増加が鮮明だ。(株式時価総額は総合面「きょうのことば」参照)
 国際取引所連盟(WFE)の月次集計や、代表的な株価指数であるMSCI世界株価指数から推計した。25日は約52兆3000億ドルと今年最低の6月末から8兆ドル(18%)増加。現地通貨ベースでも13%増えている。

 11月に米連邦準備理事会(FRB)が大規模な緩和に踏み切るとの観測から、世界の投資家が資金を振り向けている。緩和観測が広がった9月以降、世界のヘッジファンドや投資信託に資金流入が加速するなど、投資マネーが膨張している。

 時価総額の増加が顕著なのは新興国市場だ。インドネシア、フィリピン市場は昨年末から5割増加。上海総合指数は中国人民銀行(中央銀行)による19日の利上げ発表後も上げ基調が続き、半年ぶりの高値圏で推移する。

 新興国の経済成長が先進国景気を下支えするとの見方から、先進国株にも資金が流入し始めた。ドイツ株は25日に年初来高値をつけたほか、米国株も高値に迫っている。ブラジルなど新興国が資本流入規制に乗り出したことから、先進国へシフトしている面もある。

 膨らんだマネーは商品相場にも流入、国際商品の総合的な値動きを示すロイター・ジェフリーズCRB指数(1967年平均=100)は25日、約2年ぶりに300を突破した。銅などの非鉄金属や大豆などの穀物が一段高となっている。金も高値圏で推移する。

 日本株は日銀による追加緩和後は底堅く推移しているが、海外株と比べ出遅れ感が強い。米欧の株式相場が9月以降、1割以上上昇している一方、日経平均株価は6%の上昇にとどまる。株安局面で大型の増資が相次ぐなど、投資家の不信感が強まっていることも背景にあるようだ。

 カネ余り主導の世界的な株価上昇は企業収益の回復が伴わなければ持続しないとの見方もある。米ゴールドマン・サックスのストラテジスト、デビッド・コスティン氏は「企業は設備の余剰や経営者の自信の低さなどで資金をなかなか使わず、金融緩和の企業業績への影響は限定的」と指摘する。

2010年11月7日日曜日

ドル動向(2010/11/7)



Forex Chart powered by CMS FX

円安ドル高要因
・金融緩和・中間選挙共和党勝利による米国経済回復期待。
→好調な米国経済指標が続けば円売りに。
・ヘッジファンドの多くが11月決算
→決算前の利益確定売り
・12月決算期末を迎えた米国が本国送金のためドル買い
・個人投資家(市場の1~2割)を占めるミセスワタナベ、逆張り利益確定売り

円高ドル安要因
・米中間選挙、共和党勝利
→企業よりの政策
 ドル安への誘惑
・日米金利差縮小
→米金利低下による米ドルキャリー取引
 ※円キャリーが全盛だった円相場は1ドル=124円まで下落
・実効為替レートの円上昇
→15年前の円史上最高値より3割割安水準
・介入失敗、APEC、G20を前にした環境下の為替介入の入りづらさ


予想レンジ 80-81円

日銀金融緩和まとめ(2010/10)


政策金利(0-0.1%)
実質的ゼロ金利

5兆円基金
※日銀券ルールの対象外。

・ETF:4500億円(市場規模2兆3000億円)
・REIT:500億円(市場規模1兆6000億円)
※各銘柄の5%を上限。各銘柄の5%を買うと最大800億円。
→ETFとREITの上昇余地は小さい。

今後
日銀が基金拡大に動くポイント
1.FRBが量的緩和を拡大
2.円高・株安の加速
3.日本経済の景気後退

特集 QE2の概要、その効果と副作用




QE2とは?
第2回Quantitive Easingの略。金融緩和。
FRBが米国債を購入することによって市場に資金を供給し、金利を低下させ、経済を活性化させる。

規模
6000億ドル(58兆円) ~2011年6月まで
※別にFRBが保有する住宅ローン担保証券2500~3000億ドル ~2011年6月まで
月平均購入額1100億ドル
合計 9000億ドル(72兆円)

購入
米国債
※米国債発行予定額
2010/10-12 3620億ドル
2011/1-3 4310億ドル
※リーマンショック以後の購入総額1兆7000億ドル
→長期の借入コスト0.5%減


効果
家計部門:金利低下による住宅ローンの借り換え、金利負担軽減
企業部門:借入コストの軽減
※NY連銀ダドリー総裁
5000億ドルの国債購入→0.5-0.75%の翌日物金利低下に相当

デメリット
バブル
商品市場
・金最高値水準
・ロイタージェフリーインデックス上昇
新興国
・インド、オーストラリアの利上げ、ルピー・豪ドル上昇
効果が限定的
・米国国内への投資に繋がらない
・引き続き悪い米住宅市場

2010年11月6日土曜日

インフレ目標採用国に「反省機運あり」明言した白川総裁の強気2010.02.19(Fri) 上野 泰也


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2821

2月18日夕刻、金融政策決定会合後の記者会見で白川方明日銀総裁は、日銀もインフレ目標を導入すべきではないかといった議論を、強気の発言であっさり否定した。次のような発言があった(引用は共同通信の報道などによる)。

「インフレーションターゲティングという言葉に即してお答えすると、これは金融政策を運営するときの枠組みの一つで、英国やカナダでは採用している。しかし今回の金融危機を通じてこの枠組みについて反省機運が生まれてきている」

「足元の物価上昇率が目標物価上昇率を下回る状況が長く続く下で、物価の動向だけに過度の関心が集まる結果、物価以外の面で静かに蓄積していた金融・経済の不均衡を見逃し、見過ごし、結果として金融危機発生の原因になったのではないかという問題意識が、以前に比べて高まってきているように思う」

「短期的に、足元の物価上昇率と目標(の間)を埋めていくように政策運営をしていくとの見方が生まれると、金融政策が最終的に目標とする持続的な成長に、むしろマイナスになる局面もある」

「どういうラベルを金融政策運営の枠組みに貼るかということに、あまり多くのエネルギーを注いでも、生産的ではない気がする。インフレーションターゲティングを採用している国も、採用していない国も、結果として金融政策の枠組みが、近年、非常に似通ってきている気がしている」

「3点だけ申し上げる。1点目は、物価安定に関する定義、あるいは目標を何らかの数値的な定義や目標にするということ。日銀に即して言うと、中長期的な物価安定の理解。2点目は、先行き数年間というかなり長い見通しを公表しているということ。日銀で言うと展望レポート。3点目は、金融政策運営にあたって足元の物価動向だけではなく、中長期的にみた物価や経済・金融の安定をより重視する必要性への認識が高まっているということ。日銀に即して言うと、2つの柱による点検」

「インフレーションターゲティングを採用しているかどうかは現在、金融政策の枠組みを議論する上で、意味のある論点、切り口ではなくなってきているという印象がある」

「G7各国でインフレターゲティングを採用している中央銀行は英国とカナダで、残りは不採用。設問として、日銀がなぜ採用していないかというのもあるが、英国とカナダがなぜ採用しているかという立て方もある。ターゲティングに関心が集まりがちだが、私自身は、実際は金融政策を運営していく時の、説明の一つの枠組みと思っている」

白川総裁も会見で一部言及していたように、最近の英国の状況は興味深い。インフレ目標採用国である英国では、+2%の目標を実際のインフレ率が1%ポイントを超える幅で上振れる状況が断続的に発生。2月16日には、今年1月の消費者物価指数が前年同月比+3.5%になったことを受けて、イングランド銀行のキング総裁がダーリング財務相あてに、目標から乖離した原因と今後の見通しを説明する書簡を送付する一幕があった。今回の消費者物価指数(CPI)上振れでは、景気対策で一時的に実施された付加価値税率の引き下げ終了によるテクニカルな影響は大きい。これに、原油価格の水準が前年の同時期よりも高くなったことや、為替のポンド安の影響が加わった。多分にテクニカルなインフレ率の数値上昇に、中央銀行が振り回されているわけである。キング総裁は、インフレ率の基調は下向きだという見解を強調している。

「日銀としては、各国のいろんな経験を見ながら、採用国の中銀の良い部分、採用していない国の中銀の良い部分を咀嚼し、それを組み込んだ、日銀独自の枠組みだと思っている。もちろん、この枠組みがいついかなる時でも最善だと言うつもりはない。各国とも自らの金融政策の枠組みをどういうふうにすればよいかという議論をしており、そういう観点からわれわれも引き続き丹念に見ていこうと思っているが、現状ではこの日銀の枠組みが最適だと思っている」

 今回の会見で白川日銀総裁は、インフレ目標に関連して上記のような強気の発言を繰り返し、政府と協調して+1%程度のインフレ目標を近く打ち出すのではないかといった市場の憶測を事実上否定した。その背景には、欧米中央銀行の金融政策運営状況からみて、日銀が採用している金融政策の枠組みには間違いなく追い風が吹いているという、白川総裁の強い確信があるのではないか。

 ただし、日本が慢性的なデフレである以上、インフレ目標導入論を含む日銀に対する政策要求は、今後も断続的に浮上してくるだろう。「市場機能を維持して緩和効果を確保するためには、政策金利はストレートにゼロ%にすべきではなく、小幅の変動余地が必要だ」という日銀の主張はグローバルに認められるところとなっており、白川総裁は金融政策の具体論で、得点を1ポイント挙げた形になっている。しかし、インフレ目標導入論でもう1ポイントを挙げたと言い切ることまでは、まだ難しいように思われる。

 なお、インフレ目標論議は今のところ、債券を中心とする市場の材料にはなりにくい。具体的な数値目標が掲げられても、それが実現するのかどうかについて、メドが全く立ってこないからである。

 仮に、+1%といった目標を日銀が政府と共有する体裁が整えられるとしても、それはあくまで長い目で見た場合のインフレ目標であろうし、しかも、金融政策面で具体的に何を行うかは、日銀に委ねられる公算が大きい。菅直人副総理・財務・経済財政相は、政策の方向性と目的については政府と日銀で共有することが望ましいが、具体的な手段については日銀が決めることだという、日銀の独立性を尊重する姿勢を示している。日銀はおそらく、粘り強く金融緩和を続けるという、現在の姿勢の延長線上で対応するだろう。だが、日銀の門間一夫調査統計局長が、2月1日に日本記者クラブで述べたように、「お金をばらまけば魔法のようにデフレが一挙に消えてなくなるというほど、この世の中は単純にはできていない」。

 地盤沈下を続けている国内消費需要を上向かせる、多面的で強力な滞在人口増加策を政府が実行し、世の中の期待のベクトルが変わってこないと、デフレからの脱却は実現することはないだろう。問題は、インフレ目標を掲げるかどうかというテクニカルな話ではない。

「インフレ目標」では日本経済の問題を解決できない

2010.02.23(Tue) 池田 信夫

景気が悪くなると中央銀行叩きが流行するのは東西を問わないが、民主党政権の特徴は日銀の政策に露骨に介入することだ。

 菅直人財務相は、衆議院予算委員会で「1%程度のインフレ目標が望ましいという認識は(日銀と)一致している」と述べた。これに対して日銀の白川方明総裁は2月18日、金融政策決定会合後の会見で「インフレターゲットは意味のある目標ではない」と述べた。認識は一致していないわけだ。

 マクロ経済学は昔からイデオロギー論争の場になってきたが、インフレ目標ばかり話題になる日本の状況は特異である。海外では、インフレ目標の是非が論争になることはほとんどない。

 G7諸国でインフレ目標を明示しているのは英国とカナダだけで、FRB(米連邦準備制度理事会)もECB(欧州中央銀行)も拘束力のある目標は掲げていない。経済学者の間でも、物価安定目標としての有効性は認められているが、中央銀行がデフレをインフレにすることができるかという問題については否定的な意見が多い。

 2000年代前半にはデフレが深刻化したため、日本銀行が政策金利をゼロにし、通貨供給を増やす「量的緩和」を行なったが、デフレを脱却できなかった。これは不良債権の処理に際して銀行の経営が不安定になった時、その資金繰りを支援して金融システムを安定化させる役には立ったが、景気対策としての意味はほとんどなかった、というのが白川総裁の総括である。

日銀が通貨を増発しただけではインフレは起こらない

 インフレ目標を求める人々は、よく「日銀がお金をばらまけばインフレになる」と言うが、これは日銀が供給するマネタリーベースと市中に流通するマネーストックを混同した議論だ。

 日銀の市場操作では、都市銀行などから短期国債などを買って銀行の準備預金口座に入金するが、増えた通貨を銀行が企業に貸し出さないと、マネーストックは増えない。

 通常はマネタリーベースが増えると金利が下がるので、企業の借り入れが増えるが、現在のようなゼロ金利状況では、金利はそれ以上は下がらないので、通貨をいくら供給しても資金需要は増えないのだ。

 この結果、2000年代に日銀が供給した35兆円に上るマネタリーベースの増加の大部分は、銀行の日銀口座に「ブタ積み」になり、マネーストックはほとんど増えなかった。余った資金は海外に流出し、低金利の円で借りて高金利のドルで運用する「円キャリー取引」を誘発してアメリカの住宅バブルを促進した疑いが強い。

 ただ理論的には、金利がゼロでも、日銀が人々の予想に働きかけることによってインフレを起こすことは可能だ。例えば十分長期にわたって日銀が金融緩和を続け、景気が回復しても引き締めに転じないことを約束すれば、人々はインフレを予想して価格や賃金を引き上げるかもしれない。

 しかしこの議論の難点は、このような約束をして実際に物価が上がり始めたら、日銀は約束を破って引き締めに転じるということだ。それを市場参加者が予想すれば、日銀がいくら目標を宣言しても効き目はない。

 事実、2000年代に日銀の取った「時間軸効果」は、このような長期的な予想に働きかける政策だったが、それによって長期金利を引き下げる効果はあったものの、インフレは起こらなかった。企業が貯蓄超過になっている(金を借りない)ゼロ金利状況では、金融緩和によって解決できる問題は限られているのだ。

複雑な問題に簡単な答えはない

 インフレ目標を主張する人々が依拠する最大の根拠は、GDPギャップがマイナス7%以上あるという政府の統計だが、これは金融政策でそれを100%埋められることを意味しない。内閣府の算出するGDPギャップの基準となる「潜在GDP」は、前期の設備利用率の平均を外挿したもので、今のように急速にGDPが縮小したときは過大に算出されている可能性がある。

 例えば2009年の自動車輸出は前年比46%減となったが、金融政策でこのギャップをすべて埋めることは明らかに不可能だ。世界の自動車需要が大きく落ち込んだ実体経済の要因がほとんどだからである。

このように現在のデフレの原因が実体経済の落ち込みによるものか貨幣的な摩擦によるものかを区別しないで、むやみに通貨を供給しても問題の解決にならないばかりか、新興国に流れ込んでバブルを引き起こす恐れが強い。

 日銀も「物価安定の理解」というゆるやかなインフレ目標を公表しており、0%以上のインフレを目指すとしている。「ターゲティング」という場合は、これより強いコミットメントを求め、達成できなかった場合に中央銀行にペナルティを課すのが普通だが、これは他の政策手段を犠牲にしても物価上昇率だけを高める無理な政策を誘発しやすい。

 当サイトで上野泰也氏も指摘するように(「インフレ目標採用国に『反省機運あり』」を参照)、物価だけを見て金融政策を運営すると、2000年代のFRBのように住宅バブルを見逃し、取り返しのつかない結果を招く。実際の物価指数は、エネルギー価格や為替などの影響を受けており、中央銀行がコントロールできるとは限らない。

 今、日本経済が直面しているのは、戦後60年以上にわたって続いてきた産業構造が、グローバル化やデジタル革命に適応できないという複雑な問題であり、これを解決する簡単な処方箋はない。

 GDPギャップを埋めることは望ましいが、経済をすべて政府がコントロールすることはできない。インフレ目標で「日本経済の問題が簡単に解決する」などと吹聴するのは、政治家をミスリードして金融政策を混乱させるだけである。

(超金融緩和 FRBと日銀)(下)物価目標、政府・日銀共有を


2010/11/6付日本経済新聞 朝刊
 「これは事実上のマネタイゼーション(財政赤字の中央銀行による穴埋め)だ」。米連邦準備理事会(FRB)が金融の量的緩和を決めた3日、FRBの元幹部は興奮気味に語った。

70兆円と5兆円
 米連邦公開市場委員会(FOMC)が決めた長期国債の購入に、FRBが保有する住宅ローン担保証券などの償還分の再投資を加えると、国債購入額は8500億~9000億ドル。円換算で70兆円前後となる。

 「国債の新規発行分を丸のみする勘定になる」と、田幡直樹RHJインターナショナル・ジャパン上級顧問は言う。バーナンキ議長はデフレ阻止を最重視し、覚悟を持って一線を越えた。

 日銀は5日、5兆円の資産買い取りの細目を決めた。購入資産は国債、社債、コマーシャルペーパーのほか、株価指数など上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)に及ぶ。週明けから順次実施する。

 値下がりリスクを伴う株式や不動産を購入するのは、FRBよりさらに一歩踏み出したかに見える。だが白川方明総裁は「効果と副作用を見極める」と述べ、なおどこか慎重さが漂ってくる。

 「5年物米国債に比べETFのリスク量は13倍」。とはいえ、ETFとREITの購入額は計5000億円。70兆円前後というFRBの国債購入額に対し、日銀の今回の資産買い入れは総額でも5兆円にとどまる。

 量的緩和の規模の違いに加え、市場が重視するのはデフレ克服の決意と戦略性の違いだ。

 前回9月と今回、FOMCは「物価の安定と雇用の最大化というFRBの使命」を強調した。使命を果たすまで何でもやるとの決意表明だ。

 今回の緩和で不十分なら、「プランB」と呼ばれる一段と非伝統的な策も用意している。望ましい物価上昇率を明示して達成を図る「インフレ目標」は有力な武器だ。

 しかも年2%といった物価の「上昇率目標」を達成すれば事足れりというのではない。

 不況で落ち込んだ物価が不況前の水準に戻るまで、中央銀行が積極的に資金を市場に供給し、一時的に物価上昇率が大きくなることすら容認する。そんな「物価水準目標」さえFOMCでは真剣に議論されている。ダドリー・ニューヨーク連銀総裁らは提唱者だ。

 日銀が1%程度の物価上昇が展望できるまで、ゼロ金利政策を続けるというのも、こうした議論を意識したものだろう。ただ1%という数字は政策目標ではなく、物価見通しに関する政策委員の個々の判断を示す「物価安定の理解」の中央値にすぎない。明示的な目標設定とは違う。

 「デフレの主因は需給ギャップであり、根っこにはグローバル化の進展や潜在成長率の低下がある」というのが、白川総裁の基本認識だ。

 「中央銀行の資産規模やマネーサプライ(通貨供給量)を増やしても、物価上昇には結びつかない」。外部への説明のために、事務方は様々なグラフを用意してみせる。

試される本気度
 そんなことは承知の上で、グローバルな投資家が目を凝らすのは、デフレ克服にかける本気度だ。もちろん、デフレの克服は政府が日銀に丸投げして達成できるような簡単な課題ではない。

 政府は望ましい物価上昇率についての指針を明らかにせずにいる。インフレ目標の設定を任されても、日銀にとって荷が重く、ためらいがちになるのも無理はない。

 ならば政府自身が望ましい物価上昇率についての目標をつくり、その目標を日銀と共有した上で、両者があらゆる政策手段を動員する体制をとったらどうだろう。

 政府がデフレ克服の責任を日銀だけに押しつけ、ねじれ国会が補正予算もほったらかしにするようでは、経済政策は空中分解してしまう。つま先立った米国と対照的に、政策の停滞が続くうちは、日本はいつまでたってもデフレの迷宮から抜け出せない。

(編集委員 滝田洋一)

阻止できるか「日本化」 超金融緩和 FRBと日銀(上)

2010/11/5 4:00
日本経済新聞 朝刊

 

米連邦準備理事会(FRB)が3日、追加金融緩和に踏み切った。露呈したのはリーマン・ショックから2年たっても独り立ちできない米経済の現実だ。日銀は4~5日の金融政策決定会合で資産買い取りの具体策を決める。日米ともに超金融緩和が続く見通しで、巨大マネーによるひずみが世界中で膨らんでいる。

 FRBの追加緩和の狙いは、市場を通じた景気の押し上げだ。株高で家計の資産価値が増えれば消費を促す。ドル安は企業の輸出を後押しする。金利の低下は住宅の購入や企業の設備投資を支える。「今日の措置は今後数年間、国内総生産(GDP)を年0.5ポイント押し上げるだろう」。米ゴールドマン・サックスのエコノミストは投資家向けの説明会で強調した。

 バーナンキFRB議長が講演で追加緩和を示唆したのは8月27日。市場はその後、議長の思惑通りに動いた。実体経済にも効果を上げるか、正念場にある。

遅れる景気回復

 昨年3月、FRBは量的緩和に乗り出し、米景気は同6月に底入れした。それでも量的緩和の第2弾を放たざるを得なかった理由は、声明文が示している。「(景気の回復は)失望するほど遅い」と。

 7~9月期の成長率は年率2%。雇用を確保し、デフレを避けるために必要とされる3%を大きく下回る。家計が歴史的な水準に膨らんだ負債の削減に追われ、GDPの7割を担う消費が伸び悩んでいるからだ。

 消費の低迷は企業に雇用を手控えさせ、消費の低迷に拍車をかける。悪循環の中で失業率は10%近くで高止まりし、デフレに陥る「日本化」の懸念も強まった。

 曲がりなりにも景気回復が続いているのに量的緩和を追加するなど、米国では前代未聞だ。市場には副作用への懸念も渦巻いている。マネーの暴走が制御不能のインフレを生まないか、米国債の購入は財政規律を損なわないか、ドルは信認を失わないか――。

 金融政策の限界に気付いているのは、当のバーナンキ議長にほかならない。「中央銀行だけでは経済問題を解決できない」。追加緩和を示唆した8月の講演では、冒頭でクギを刺している。

 だが中間選挙で与党・民主党が大敗し、政府は財政政策の手足を縛られた。オバマ大統領は「国民の懸念は財政赤字や支出にある」と敗因分析しており、9月に打ち上げた景気刺激策の行方は揺らぎ始めた。議会が政治的駆け引きに時間を消耗して政策が滞れば、ますます金融政策頼みは強まる。FRBは第3、第4の緩和を迫られ、副作用の芽は膨らむばかりだ。

膨らむひずみ

 しわ寄せは世界に広がる。6000億ドルというFRBの購入額は、月にならせば米国債発行額の4割に相当する。FRBが供給する大量のマネーは高利回りを求めてグローバル市場を駆け巡る。

 住宅など資産価格が上昇する新興国へマネー流入が加速すれば、バブルはさらに膨らみ、崩壊のリスクが高まる。ほころびが瞬く間に世界に波及するのはギリシャ危機の教訓だ。デフレに悩む先進国とインフレ懸念に悩む新興国――。二極化する世界経済のはざまで奔走するマネーの波乱をどう抑えるか。11~12日の20カ国・地域(G20)首脳会議の焦点だ。

 昨年末には「景気回復でFRBは2010年末に利上げする」との見方もあったが、回復力の鈍さはFRBにとって誤算だった。いまや多少の副作用に目をつぶってでも「日本化」阻止に動かざるを得なくなっている。

(米州総局編集委員 梶原誠)

日本株式の大逆襲⑤ ~米国の金融緩和と経済回復期待~


今週、ついにFOMCが開催され、QE2(金融緩和)が実施された。規模は市場予想5000億円を若干上回る6000円億円。市場はこの数字を好感し、NYダウ、日経平均は大きく上昇した。

「ヘリコプター・ベン」と言われたバーナンキ議長。プリンストン大学教授時代は日本の金融政策について、「ヘリコプターから紙幣を撒けば良い。」と提唱していた。つまり大幅な金融緩和と減税措置である。

FRB議長に就任してからはこのような過激な発言は控えている様子だが、当時の日本に政策を提唱したように母国米国でその政策を実行した。今回のFOMC声明文には「The Committee will regularly review the pace of its securities purchases and the overall size of the asset-purchase program in light of incoming information and will adjust the program as needed to best foster maximum employment and price stability. 」とある。「最新情報次第で見直し、最大限の雇用と物価安定促進に必要な形で調整する」ということで、経済情勢によっては更なる金融緩和を行う可能性があるとしている。
http://arfaetha.jp/ycaster/diary/6000.html

金融緩和は米国の経済先行き期待を増幅させ、円安ドル高方向に少し傾いた。これは日本の株高に繋がる。また、米国の潤沢なマネーは、新興国に向かうばかりでなく日本にも向かい初めている。


流動性相場色強まる、円高でも日本株は大幅続伸
2010年 11月 5日 13:49 JST
 [東京 5日 ロイター] 5日午前の東京市場は流動性相場色が強まる展開となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)の量的緩和第二弾導入から一日経過し、「材料出尽くしシナリオによる売り」は一巡、米金融緩和を背景にしたドルキャリー投資が新興国だけでなく日本にも向かっている。

 対ドルで円高が進行したにもかかわらず日経平均は大幅続伸、国債先物も上値が重いものの底堅かった。日銀決定会合での追加緩和はなかったが、懸念された円高は限定的だった。

 <日本株に海外勢の買い>

 株式市場で日経平均は続伸し、10月12日以来となる9600円台を回復した。米連邦準備理事会(FRB)による追加量的緩和策や中間選挙での共和党躍進を好感し米株が大幅高になったことで、東京市場でも幅広い銘柄に買いが先行している。「流動性に対する期待感が大きくなった。商品市況の上昇を受けて商社、非鉄株などに海外勢の買いが観測されているほか、銀行株などに買い戻しが活発化している」(東海東京証券エクイティ部部長の倉持宏朗氏)という。

 買いの主体は海外勢とみられている。米ダウは4日、2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻直前の水準まで回復し、投資家のリスク許容度が増している。「海外機関投資家から過剰流動性資金が流入している。日経平均はドルベースでみれば年初来高値に接近しており、海外勢にとってパフォーマンスは悪くない状況だ。PERなどのバリュエーション面でも割高感はなく、目先は資金流入が継続する可能性が高い。短期的な下値不安はいったん後退した」(SMBCフレンド証券投資情報部部長の中西文行氏)との声が出ている。

 日銀決定会合では上場投資信託(ETF)などの買い入れ概要を決定した。追加緩和はなかったが、一部で懸念されていたような円高進行は限定的であり、日経平均も高値圏を維持している。


昨日発表された米国雇用統計も、失業率は前月より若干上がったものの、雇用者数は予想より2倍以上増えた好材料。


米国の景気回復は、米国マネーの日本行きと円安へ向かわせ、日本株のパフォーマンスを大きく上げることになる。

日本株式の大逆襲④ ~過度な円高の修正基調~



現在の円高は異常か。それとも適正水準なのか。以下に面白い記事がある。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/trend/CK2010110202000060.html

円の適正水準 基準次第、判断変わる

2010年11月2日 紙面から

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 十五年半ぶりに円が史上最高値(一ドル=七九円七五銭)に迫る中、現在の円相場は実力以上に高すぎるとの声もある。為替の適正水準は、どう判断すれば良いのだろう。

 為替の水準を簡単に調べるには、比較する国で売られている同一商品の値段を比べる方法がある。英エコノミスト誌はマクドナルドのハンバーガー、ビッグマックを使う「ビッグマック指数」を毎年公表。今年は、日本の値段(三百二十円)を米国の値段(三・七三ドル)で割った一ドル=八五円七九銭だった。スターバックスのコーヒーやアップルの携帯音楽プレーヤー、iPod(アイポッド)で比較する方法もある。

 しかし、こうした商品の価格は企業戦略や競争環境などで変わる。このため全体像を見るにはさまざまな物価を比べた「購買力平価」という考え方もある。経済協力開発機構(OECD)の調査では二〇〇九年は一ドル=一一六円。実際の為替レートの年平均は一ドル=九三円だったので、かなりの円高だったといえる。

 ただし、為替取引はドル以外にもユーロやウォンなど多くの通貨間で行われる。そこでさまざまな通貨の中で総合的な“実力”を示す「実効為替レート」というのもある。それでみると現在の円は史上最高値より三割ほど割安。当時よりは企業の円高耐久力が高まり、危機感は低いようにもみえる。さまざまな要素が絡み合うので為替の適正水準は何を基準にするかで判断が分かれる。 (岸本拓也)

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◆実効為替レート

 2国間だけの為替レート比較だけでは分からない通貨の総合的な実力を示す指標。ドルやユーロ、人民元など主要通貨を対象に基準年(現在2005年)を100として、世界58カ国・地域の通貨と円の為替レートを基に、日本と各国の貿易量を考慮して算出する。数値が大きいほど通貨高となる。「名目」と「実質」がある。物価変動の影響を取り除いた「実質」では、日本のようにデフレの国の通貨は相対的に価値が安くなり、実態よりも割安な数値が出る問題もある。



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日本はデフレ状態の中にある。物価が続落すれば、その分同じ貨幣で買うことのできるものが多くなっていく。つまり10000円があれば、どんどんモノの値段が安くなるので、今より将来の方がより多くのものが買えることになるのだ。

デフレは大きな円高要因だ。この低金利で円が買われる理由はこのデフレであろう。デフレが続く限り、円高基調が極端に収まることはないだろう。

ただ、現在の適正為替水準を116円と考えれば、やはり現在の為替水準は異常な水準だ。市場価格はいずれ適正水準となる。そのきっかけが今回の米国の金融緩和と景気回復だ。このまま米国の景気が回復されれば、円高が是正され、これから日本株はその出遅れを取り戻すことになるだろう。

日本株式の大逆襲③ ~日本株の出遅れ~

日本証券新聞に掲載されていたコラム(10月12日)に9月までの世界株式市場のパフォーマンスが掲載されていた。
http://www.nsjournal.jp/column/detail.php?id=229416&dt=2010-10-12

9月の世界株式市場・国別パフォーマンス
 9月順位9月騰落率年初来順位年初来騰落率
1フィリピン19.98フィリピン44.98
2スウェーデン19.95タ イ42.49
3フィンランド17.45チ リ38.44
4ハンガリー16.91インドネシア35.31
5ポーランド16.18トルコ28.59
6ノルウェー15.66ペルー28.52
7トルコ15.4マレーシア27.43
8フランス14.64スウェーデン21.94
9インドネシア14.28インド18.41
10インド14.26南アフリカ16.92
11オーストリア13.77デンマーク16.2
12オランダ13.66香 港16.19
13南アフリカ13.66韓 国11.99
14豪 州13.64シンガポール11.02
15ドイツ13.36メキシコ9.13
16香 港12.98カナダ7.74
17デンマーク12.94ポーランド7.73
18ペルー12.81モロッコ6.41
19ベルギー12.56エジプト5.94
20韓 国12.45中 国4.94
21イタリア11.63フィンランド4.15
22台 湾10.8ロシア4.07
23タ イ10.72米 国3.7
24メキシコ10.56スイス2.85
25スペイン10.52ベルギー2.85
26ブラジル10.28ブラジル2.46
27チ リ10.01豪 州2.19
28イスラエル9.77日 本1.91
29ポーランド9.65イスラエル1.51
30中 国9.51英 国1.26
31米 国9.29台 湾1.24
32英 国8.93チェコ0.97
33ニュージーランド9.79ハンガリー▼1.65
34ルクセンブルグ8.18オーストリア▼1.68
35カナダ8.16ノルウェー▼1.83
36シンガポール7.98オランダ▼1.89
37モロッコ7.3ドイツ▼2.16
38アイルランド7.06ニュージーランド▼3.03
39チェコ6.44フランス▼6.66
40ロシア6.1ルクセンブルグ▼12.89
41スイス5.62アイルランド▼13.67
42マレーシア5.58ポルトガル▼15.06
43エジプト4.46イタリア▼15.19
44日 本3.65スペイン▼16.85
45ギリシャ0.69ギリシャ▼39.32
(「S&Pグローバル株価指数」が対象、単位:%)

9月といえば季節的に株式があまり上昇しない月と見なされていたが、今年に限っては上昇。米国では、「9月としては71年ぶりの上昇率(ニューヨークダウ△7・7%、S&P500△8・8%)」。

しかし日本株式が冴えない。9月の上昇率は世界主要45市場で下から2番目のブービー賞。年初来からもまだ1.91%しか上昇していない。

日本株式市場がいかに世界から出遅れているということがわかる。新興国が牽引して世界経済が徐々に回復基調にある時にもかかわらずである。これは、日本株がこれから十分に上昇余地があるということに繋がるのだ。