
2010/11/4 22:51日本経済新聞 朝刊1015文字
世界の株式市場の時価総額が拡大している。主要市場の合計は25日時点で、推計52兆ドル強(約4200兆円)と2年4カ月ぶりの水準に回復、2008年9月の金融危機直前を6兆ドル上回った。米国などの金融緩和観測で膨らんだ投資資金が成長期待の高い新興国株式に流入。一部は景気の先行き懸念が残る欧米など先進国株にも回帰し始めており、マネー主導の増加が鮮明だ。(株式時価総額は総合面「きょうのことば」参照)
国際取引所連盟(WFE)の月次集計や、代表的な株価指数であるMSCI世界株価指数から推計した。25日は約52兆3000億ドルと今年最低の6月末から8兆ドル(18%)増加。現地通貨ベースでも13%増えている。
11月に米連邦準備理事会(FRB)が大規模な緩和に踏み切るとの観測から、世界の投資家が資金を振り向けている。緩和観測が広がった9月以降、世界のヘッジファンドや投資信託に資金流入が加速するなど、投資マネーが膨張している。
時価総額の増加が顕著なのは新興国市場だ。インドネシア、フィリピン市場は昨年末から5割増加。上海総合指数は中国人民銀行(中央銀行)による19日の利上げ発表後も上げ基調が続き、半年ぶりの高値圏で推移する。
新興国の経済成長が先進国景気を下支えするとの見方から、先進国株にも資金が流入し始めた。ドイツ株は25日に年初来高値をつけたほか、米国株も高値に迫っている。ブラジルなど新興国が資本流入規制に乗り出したことから、先進国へシフトしている面もある。
膨らんだマネーは商品相場にも流入、国際商品の総合的な値動きを示すロイター・ジェフリーズCRB指数(1967年平均=100)は25日、約2年ぶりに300を突破した。銅などの非鉄金属や大豆などの穀物が一段高となっている。金も高値圏で推移する。
日本株は日銀による追加緩和後は底堅く推移しているが、海外株と比べ出遅れ感が強い。米欧の株式相場が9月以降、1割以上上昇している一方、日経平均株価は6%の上昇にとどまる。株安局面で大型の増資が相次ぐなど、投資家の不信感が強まっていることも背景にあるようだ。
カネ余り主導の世界的な株価上昇は企業収益の回復が伴わなければ持続しないとの見方もある。米ゴールドマン・サックスのストラテジスト、デビッド・コスティン氏は「企業は設備の余剰や経営者の自信の低さなどで資金をなかなか使わず、金融緩和の企業業績への影響は限定的」と指摘する。
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