2010年11月6日土曜日

流動性相場色強まる、円高でも日本株は大幅続伸

JP

2010年 11月 5日 13:49 JST
 [東京 5日 ロイター] 5日午前の東京市場は流動性相場色が強まる展開となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)の量的緩和第二弾導入から一日経過し、「材料出尽くしシナリオによる売り」は一巡、米金融緩和を背景にしたドルキャリー投資が新興国だけでなく日本にも向かっている。

 対ドルで円高が進行したにもかかわらず日経平均は大幅続伸、国債先物も上値が重いものの底堅かった。日銀決定会合での追加緩和はなかったが、懸念された円高は限定的だった。

 <日本株に海外勢の買い>

 株式市場で日経平均は続伸し、10月12日以来となる9600円台を回復した。米連邦準備理事会(FRB)による追加量的緩和策や中間選挙での共和党躍進を好感し米株が大幅高になったことで、東京市場でも幅広い銘柄に買いが先行している。「流動性に対する期待感が大きくなった。商品市況の上昇を受けて商社、非鉄株などに海外勢の買いが観測されているほか、銀行株などに買い戻しが活発化している」(東海東京証券エクイティ部部長の倉持宏朗氏)という。

 買いの主体は海外勢とみられている。米ダウは4日、2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻直前の水準まで回復し、投資家のリスク許容度が増している。「海外機関投資家から過剰流動性資金が流入している。日経平均はドルベースでみれば年初来高値に接近しており、海外勢にとってパフォーマンスは悪くない状況だ。PERなどのバリュエーション面でも割高感はなく、目先は資金流入が継続する可能性が高い。短期的な下値不安はいったん後退した」(SMBCフレンド証券投資情報部部長の中西文行氏)との声が出ている。

 日銀決定会合では上場投資信託(ETF)などの買い入れ概要を決定した。追加緩和はなかったが、一部で懸念されていたような円高進行は限定的であり、日経平均も高値圏を維持している。

 第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は「為替市場では、まだまだ予断を許さない状況にあり、日銀も通貨安、金融緩和競争に備えているとみられる。もしも、米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けて、為替が1ドル79円台といった状況にあったならば、日銀は国債買い入れ増額といった厳しい選択を迫られた可能性もある」との見方を示している。

 <G20でドル安批判高まるとの見方も>

 ドル/円は堅調。一時81.00円まで上昇した。五・十日のドル需要がドルを押し上げたほか、日銀金融決定会合の結果発表を控えていることも、ある程度ドル/円をサポートした。決定会合で一段の緩和が見送られると、ドル/円は一時80.66円まで30銭弱下落したが、下げ幅は限定的だった。

 米金融緩和を受けて、ユーロは海外市場で9カ月半ぶり高値の1.4283ドルをつけるなど、ユーロ高が進んでいる。トリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁は理事会後の会見で無制限の資金供給オペを含む緊急支援措置の解除が可能かどう12月に決定する方針を示すなど、出口にらみのスタンスを示したことで、米連邦準備理事会(FRB)との違いが意識された。

 トリシェ総裁は「(米追加緩和により)ドル安戦略を推し進めているのではないというわたしの確信が揺らぐことはない」と述べ、「変動相場制を取り入れている他の通貨に対して米ドルが強いことは米国の利益だ」との考えを示した。 一方で、米ウォールストリート・ジャーナル紙は、ラガルド仏経済相が米国の追加緩和について、ユーロに上昇圧力をかけており、米国がドル安を模索しているのかどうか国際的な関心を集めているとの考えを示したと伝えている。

 来週末に20カ国・地域(G20)首脳会議を控え、ブラジルや中国など新興国のほかドイツやフランスなどからも米金融緩和によるドル安に対する懸念の声が上がるようになっている。市場では「G20では、(国内政策である)米金融政策についてはともかくその結果としてドル安が他通貨に影響を及ぼしていることは議論されるだろう。共同声明にドルの急速な下落について盛り込むのは難しそうだが、もし盛り込まれればインパクトがある」(大和総研チーフ為替ストラテジスト、亀岡裕次氏)との声もあった。

 <円債は超長期ゾーンの軟調続く>

 国債先物はほぼ横ばい圏で午前の取引を終えた。朝方は前日の米国債価格が上昇した流

れを引き継ぎ買いが先行したものの、商品投資顧問業者(CTA)の株先買い/債先売りなどでマイナス圏に沈み、その後も上値の重い展開が続いた。

 市場では「10年債は2日の入札後、0.9%台後半での押し目買いは確認できたが、金利ベースで買い目線が切り下がったかというと、そういう感じでもない。先物143円台半ば、10年債0.9%前後では上値が重くなる公算が大きい」(日興コーディアル証券の野村真司チーフ債券ストラテジスト)との声が出ていた。

 その10年最長期国債利回りは0.915%で変わらず。一時、0.925%まで売られたものの、地域金融機関とみられる押し目買いが下値を支えた。

 一方、超長期ゾーンが引き続き軟調だった。きょうの流動性供給(81回、3000億円)入札や来週の40年利付国債(3000億円、2050年3月20日償還)入札を控え、警戒感が強まった。下値では「生保勢の買いが入っている」(外資系証券)との声も出ているが、米国では30年債利回りに上昇圧力がかかっており、こうした動きを懸念する市場参加者が多い。

 (ロイター日本語ニュース 金融マーケットチーム)

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