円の適正水準 基準次第、判断変わる
2010年11月2日 紙面から
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十五年半ぶりに円が史上最高値(一ドル=七九円七五銭)に迫る中、現在の円相場は実力以上に高すぎるとの声もある。為替の適正水準は、どう判断すれば良いのだろう。
為替の水準を簡単に調べるには、比較する国で売られている同一商品の値段を比べる方法がある。英エコノミスト誌はマクドナルドのハンバーガー、ビッグマックを使う「ビッグマック指数」を毎年公表。今年は、日本の値段(三百二十円)を米国の値段(三・七三ドル)で割った一ドル=八五円七九銭だった。スターバックスのコーヒーやアップルの携帯音楽プレーヤー、iPod(アイポッド)で比較する方法もある。
しかし、こうした商品の価格は企業戦略や競争環境などで変わる。このため全体像を見るにはさまざまな物価を比べた「購買力平価」という考え方もある。経済協力開発機構(OECD)の調査では二〇〇九年は一ドル=一一六円。実際の為替レートの年平均は一ドル=九三円だったので、かなりの円高だったといえる。
ただし、為替取引はドル以外にもユーロやウォンなど多くの通貨間で行われる。そこでさまざまな通貨の中で総合的な“実力”を示す「実効為替レート」というのもある。それでみると現在の円は史上最高値より三割ほど割安。当時よりは企業の円高耐久力が高まり、危機感は低いようにもみえる。さまざまな要素が絡み合うので為替の適正水準は何を基準にするかで判断が分かれる。 (岸本拓也)
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◆実効為替レート
2国間だけの為替レート比較だけでは分からない通貨の総合的な実力を示す指標。ドルやユーロ、人民元など主要通貨を対象に基準年(現在2005年)を100として、世界58カ国・地域の通貨と円の為替レートを基に、日本と各国の貿易量を考慮して算出する。数値が大きいほど通貨高となる。「名目」と「実質」がある。物価変動の影響を取り除いた「実質」では、日本のようにデフレの国の通貨は相対的に価値が安くなり、実態よりも割安な数値が出る問題もある。
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