2010年 11月 8日 15:46 JST
[北京 5日 ロイター] 中国が2008年11月9日に発表した2年間で4兆元(6000億ドル)の景気刺激策は、終了が近づいている。当初は、刺激策が実行できるのか懐疑的な見方もあったが、中国はこの間、早急に2けた成長を回復、世界経済の立て直しに貢献した。ただ同時に、不良債権や無駄な公共投資という問題も残した。
景気刺激策の終了が迫るなか、当局者や専門家は、この巨額支出という実験が中国経済に与えた意味について、問い直そうとしている。
中国国務院(内閣に相当)のアドバイザーを務めるChen Quansheng氏は「薬を飲めば副作用は避けられない」との見方を示す。つまり刺激策の評価は、良い面も悪い面もあった、ということだ。
UBSの中国担当チーフエコノミスト、Wang Tao氏は「刺激策の主な利点は成長を持続させたことだ。雇用にとって有益であり、中国で危機が起きるのを防いだ」と指摘する。「しかしコストもあった。刺激策の最終的な規模はおそらく大きすぎたのだろう。そのため、不良債権や資産配分の失敗という将来にわたる問題が生まれてしまった」と述べた。
中国の政策当局者は、刺激策を高く評価している。温家宝首相は9月に「刺激策は中国の現実に合っており、タイムリーで強力、かつ効果的だった」「正しい決定であり、われわれにとって、将来の世代にとって、そして世界全体にとり有益だった」との認識を示している。
<刺激策、経済への影響配慮し段階的に終了へ>
中国の景気刺激策は発表後、効果がすぐさま現れた。銀行の新規融資は11月、前月の3倍となり、2009年半ばまで増加が続いた。
中国経済や世界の市場への影響に配慮し、刺激策は段階的に終了に向かうだろう。また、大規模プロジェクトの多くは長期的なもので、すぐになくなるわけではない。
前述の国務院アドバイザーのChen氏は「政府の投資や銀行貸し出しは来年もその翌年も、堅調さを維持するだろう。刺激策で建設が始まった港湾や高速道路、鉄道は、完成までに何年もかかる」と話す。
こうした刺激策の持ち越しがなくとも、中国では政府の投資は単に危機対策ツールではなく、経済発展に欠かせないものとなっている。
クレディスイスのエコノミスト、Dong Tao氏は、刺激策が終わっても、インフラの近代化や医療や教育など社会保障分野へは今後も支出が続く、と指摘。「中国はもはやパニックの状態ではない。焦点は、刺激の加速から構造改革に移っている」との見方を示している。
中国政府はすでに、金融政策を正常な状態に戻しつつある。銀行の貸し出し抑制を実施したほか、銀行の預金準備率は今年、4回引き上げている。また、先月には、政策金利をほぼ3年ぶりに引き上げた。
財政省の研究機関のディレクター、Jia Kang氏は「われわれは危機後の時代の出口戦略を考える必要がある。段階的に静かに行う」と述べた。
(Simon Rabinovitch記者、Zhou Xin記者;翻訳 吉川彩;編集 宮崎亜巳)
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